漫画はいかにして描くのか?
今回は漫画制作の全体像を6つのステップに分けて説明していこう。
一つ一つの詳細は別記事に譲り全体の流れを俯瞰したい。
Contents
1.構想
僕は漫画を作る時、まず構想を練ることから始める。
「これからどんな漫画を作るのか?」の全体像をざっくりとでいいので決めていくのだ。
- その漫画のテーマは何か?
- 登場キャラクターは?
- 大体どんな感じのストーリーになるのか?
- ジャンルとしては何に属するのか?
- 印象的なシーンは何?
- 主人公に対立する存在は…
などその漫画を構成するあらゆる要素を出していく部分を
僕は構想と呼んでいる。
この段階では漫画に投入する要素を全部書き出していく。
要素を出していき、これとこれが結びついたら面白そうだなとか、こんな性格を持たせるとキャラが立ちそうだなとか色々試行錯誤する段階と言える。
この段階でキャラクターやその役割、ヴィジュアルなども決めていく。
僕は構想の部分というのは外の移動中とか何か別の事をしている時に思いつくので、その都度メモを取り、全体像が見えてきた時点で次の段階であるプロットに入ることが多い。
構想というのは様々なアイデアを出していき、作品として使える要素を選別していく作業である。
構想から出てきたアイデアを基にプロットにまとめ上げていくのだ。
2.プロット
プロットとは物語の筋で、重要な出来事をまとめて要約したもの。
構想の段階で出した様々なアイデアを話の筋としてまとめ上げる段階である。
たくさん出てきたアイデアというピースをパズルに当てはめていくような感じ。
・アイデアとアイデアがいかに重なり、キャラクターがどう機能するのか?
・どこに印象的なシーンを置き、どうテーマをまとめるのか?
・イントロと中盤とラストの流れをどうつなぐか?
・どこにどんな形で伏線を張るのか?
などバラバラだった要素を有機的な一つの物語にまとめ上げていく。
どうつないでいいか分からないという人もいるだろう。
プロットを作る時、大切になるのがテーマである。
展開に迷ったら原点であるテーマに立ち返る。
テーマは大海を漂う船にとっての地図であり、方位計ともいえるだろう。
また何ページ目にどのエピソードを入れるのかなど、ページと出来事を照らし合わせて置いたりもする。
プロットが出来る時というのはパズルがうまい具合にハマっていく感じによく似ている。
全ての要素が上手くはまる瞬間があってそれを探し出す思考実験を繰り返していくような。
プロットネームの間には発想の飛躍が欲しい
中にはプロットの後にシナリオや箱書きを書く人もいる。
シナリオは誰が、どこで、どんな状況で、どんなセリフを言うかという詳細な場面設定まで決めておくこと。
僕はこれは行わず、プロットが出来た段階でネームに移るようにしている。
なぜならプロットからネームに移行する時の、発想の飛躍を大切にしているからだ。
シナリオで細部までセリフや場面を特定してしまうとネームを描く際、それを漫画の形に書き写す作業となり発想の飛躍が生まれるチャンスを逃してしまう。
漫画が面白くなるのはプロットからネームに移行する際の発想の飛躍にあると僕は思う。
文字で書かれたプロットの段階では気づかなかった面白い要素が、ネームを描いている時に見つかるという事は多々ある。
ネームでキャラを動かしたときに、そのキャラの特徴が初めてわかったりもする。
文字の段階ではつかみ切れなかった面白さが、漫画の形で転がしたときに判明することもあるのだ。
漫画の流れ、勢い、展開の中で発想が別の面白さに飛躍する瞬間があるということ。
これをつかむためにもシナリオで細部まで固めず、ゆるみを作っておくことで次のネームで漫画が化けることがあるのだ。
3.ネーム
ネーム(絵コンテ)とはコマ割り、構図、擬音やセリフなど完成原稿になる形を大まかに描いたもの。
ネームをもとに完成原稿へ仕上げていくので、この時点で漫画の面白さが決定付けられると言っても過言ではない。
まさに漫画の原点、設計図ともいえる、最もクリエイティブな力が必要とされる。
ネーム以降は絵を描くという作業になるけど、ネームは音楽で言うと作曲に似ているかもしれない。
ネームで作曲をし、作画で演奏するような。
プロットで決められた話の筋やキャラクターの関係図がネームの中で有機的に組み合わされて漫画という形を成す。
だから漫画を描く全過程の中で一番頭を悩ませる箇所ともいえる。
絵は別の人が描いても、ネームを描いた人がその漫画の作者と言われるのを見れば漫画の根幹を成すことが分かる。
僕はネームを描くとき、勢いを大切にしている。
良いアイデアは流れるように降りてくる。
その流れを一気につかんで描き切るのだ。
ネームを描くというのはタイミング、気の流れ、勢いというものがあってそれをつかむ感覚は磨いておく必要があるだろう。
出来上がったら何度も読み直して、修正加筆してより面白いものに仕上げていく。
絵は正直分かればOK。
丸描いてチョンな描き方をする人や、割と精密に描く人、中にはネームを一切書かずいきなり下描きにはいる人もいる。
僕がネームを描くときはA4の紙を半分に折り、見開き単位で描いている。
今はスマホで漫画を読む人も多いから縦読みを意識に入れる必要もあるけど、同人誌など本の形で発行するのなら見開きの状態でどう見えるかを意識しながら描くのが良いだろう。
4.下描き
完成したネームをもとに原稿用紙に鉛筆で下描きをしていく。
背景であれば透視図法を使い、擬音、吹き出し、キャラなどを丁寧に描いていく。
濃い目(2B~4B)の鉛筆やシャーペンなどを使い、うっすらと描こう。
というのも最終的に下描きの線は消しゴムで消すことになるからだ。
ポイントはペンを入れるための補助線であるという事。
下描き状態の漫画というのはうまく見える。
下描きとペン入れ後の絵の落差に初めはがっくりすることもあるかもしれない。
鉛筆は使い慣れているけど、つけペンを使いこなすのは慣れが必要なのだ。
そんなこともあり下描き状態の漫画に満足してしまいかねないけど、最終的に残るのはペンでありその予備線を引いてることを意識してほしい。
5.ペン入れ
下描きをした原稿につけペンとインクを使用してペン入れをしていく。
主にGペン、マルペン、さじペン、スクールペンなどを使用する。
人によってはつけペンではなくコピックライナーなどを使用する人もいるだろう。
僕は人物など主要な線を引くときはGペンを使い、背景や小物、効果などはより細い線の描ける丸ペンを使用している。
昔はさじペンやスクールペンなども使っていたけど、Gペンと丸ペンが使い分けられればあらゆるものが描けると分かったのでペン先ではこの二つに統一している。
ポイントは丁寧に線を引くこと。
漫画の絵は丁寧に線を引くだけでもかなり見栄えが変わってくる。
漫画は線の集合体で作られるのだから。
6.仕上げ
- 消しゴムかけ
- ホワイト修正
- トーン貼り
- ホワイトとペンによる最後の加筆
- セリフ入れ
ペン入れが終わったら消しゴムをかけて下書きの線を消していく。
はみ出した線やミスタッチはホワイトを使い修正しよう。
そしてトーン貼りがやってくる。
トーンは中間色のグレーを表現する時に貼るもの。
使いたい大きさにカッターで切って所定の位置に貼る。
小学校の図工の時間を思い出す作業だ。
トーンの上からペンやホワイトで効果をつける部分があればこの時点で描き足していこう。
セリフ入れは吹き出しの中に鉛筆で文字を入れていく作業。
分からない漢字はちゃんと調べて書き入れよう。
今は漫画作成用パソコンソフトがあるのでそちらで行えばトーン貼りは簡単である。
僕も昔はトーンを切り貼りしていたけど、今ではクリップスタジオプロという漫画作成ソフトを使ってトーン作業を行っている。
ちなみにプロの漫画家で分業体制を敷く人は効果線やベタといった作業はアシスタントの人に任せるだろう。

効果線

ベタ
しかし僕は全工程を一人で行っているので、効果線やベタはペン入れ時に行っている。
仕上げは漫画原稿にお化粧をして綺麗に仕立てあげる作業
僕は仕上げは全ページ消しゴムをかけた後、残りの工程を一ページ単位で仕上げていく。
仕上げは製作段階でごっちゃになった原稿用紙にお化粧をして綺麗に整える作業だと感じている。
ちゃんと人前に立てる紳士淑女に漫画を仕立て上げる過程ともいえようか。
まあざっと上のような感じで漫画の制作を行っている。
今回は全体の流れをざっと示してみた。
これから漫画を制作する6つのステップを一つずつ取り出して解説をしていこうと思う。
執筆者:ARThiro
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