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美術史上を変えた光と闇の自己表現!カラヴァッジョの創造人生とは

投稿日:2016年12月31日 更新日:

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西洋美術史上最大の革新者の一人であり、殺人を犯したならず者のイタリアの画家ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(1571年9月29日~1610年7月18日)。

僕も美術史上最高に好きな画家!

 

カラヴァッジョの絵画を見るたびに神聖な、高貴なものを感じる。

しかし画家本人は神聖さとは真逆の人であった。

 

カラヴァッジョは西洋美術の歴史を変えた。

カラヴァッジョの自己表現が西洋美術におけるバロック絵画の出発点となった。

 

それまでジョット、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ティツィアーノと続いたイタリアルネサンスの時代も終焉を迎えるころにカラヴァッジョは登場した。

 

カラヴァッジョの革新的な表現は、その後のバロック絵画を代表するレンブラント、ルーベンス、ベラスケス、フェルメールなどに影響を与えている。

 

ルネサンスという一大芸術革命の終焉に出てきて、絵画の流れを全く新しい方向へ導いた世紀の天才画家カラヴァッジョ。

 

カラヴァッジョは生前その素行の悪さから悪名高く最後には殺人を犯してしまう。

 

西洋美術史上最高の画家の一人と言われるカラヴァッジョの創造人生と自己表現に迫ってみよう!

 

 

 

カラヴァッジョの創造人生!


果物かご

果物かご

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョは1571年9月29日(僕と同じ誕生日!)イタリアのミラノで三人兄弟の長男として生まれた。

 

カラヴァッジョが6歳の時ミラノでペストが流行し、父親が亡くなった。

父を失って独り立ちしなければならなくなったカラヴァッジョは当時有名な画家であったシモーネ・ペテルツィアーノの徒弟となって家を出る。

 

一人前の画家となった1592年、母が死去したのちカラヴァッジョは当時の文化芸術の中心地ローマに出る。

 

やがてカラヴァッジョにはフランチェスコ・デル・モンテ枢機卿というパトロンが現れる。

 

この人物との出会いが画家の生涯で最大の幸運となった。

 

彼はカラヴァッジョを邸宅に招いて雇い入れてくれた。

 

カラヴァッジョは経済的なバックアップを得た上で写実的な画家として頭角を現し、静物画や少年像を多く描きだす。

 

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トカゲに噛まれた少年

 

やがてカラヴァッジョは自分のスタイルを完成させる。

それは光と闇を劇的に使う手法であった。

新約聖書から題を借りてきて、その場面の光景を描き出す。

 

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聖マタイの召命

 

聖マタイの殉教

聖マタイの殉教

 

僕は下の聖マタイの殉教という絵が特に大好きだ!

まもなく命を奪われようとする危機的な瞬間が捉えられており、感情表現、光と闇、見せ方に緊張感が張り詰めている。

傑作とはこういう絵画を言うのだと思う。

 

上の二点は発表直後大絶賛を浴び、まもなくカラヴァッジョは有名になる。

 

この辺りからローマの重要な教会や有力な貴族から多くの注文を受けるようになり、その名はイタリア中に響き渡っていった。

 

 

 

生来の放蕩の血が騒ぎ、狂乱の日々を送るカラヴァッジョ


聖ペテロの磔刑

聖ペテロの磔刑

売れっ子になったカラヴァッジョは一人で暮らしだすようになると同時に生活が乱れ始めた。

 

カラヴァッジョは2週間ほどアトリエにこもって仕事をすると、1,2か月従者を引きつれ剣を帯びて盛り場を遊び回ったという。

 

行く先々でいさかいを起こし、つまらないことで警官と衝突しては逮捕された。

しかし、そのたびに作品の完成を待ち望む友人や貴族たちに助けられて保釈される。

 

暴行障害、武器不法所持、警官侮辱、名誉棄損、器物損壊、殺人未遂などで何度も出入獄をくりかえしたカラヴァッジョ。

 

しかし自分の絵画に対しては絶対の自信を持っており、歴史に残る巨匠たちでさえののしる程。

 

キリストの埋葬

キリストの埋葬

 

傲慢で口が悪く、皮肉屋であったカラヴァッジョは1603年ライバルの画家バリオーネを誹謗中傷する怪文書を回したとして訴えられる。

 

その後も食堂の給仕の態度が悪いと顔に皿を投げつけたり、警官に石を投げたり、1605年7月にはナヴォーナ広場で公証人パスクアローナを背後から襲撃し頭を切りつけた。

女性をめぐっての争いであった。

 

素行の悪さは激化し、1606年にはついに殺人を犯してしまう。

 

 

殺人を犯したカラヴァッジョに死刑命令が


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メデューサ

 

かねてからカラヴァッジョと対立していたチンピラ一味と剣を持っての乱闘の末に切り殺してしまうのである。

 

これは大事件となりローマで最も有名な画家であったカラヴァッジョはまもなく死刑宣告を受けて、ローマから逃亡する。

 

これはいつでもカラヴァッジョを殺してもよいという布告で、以後カラヴァッジョは死と隣り合わせの逃亡生活を送ることになる。

 

ローから逃亡した画家は南イタリアを流浪して描いては逃げ、逃げては絵を描く。

 

しかもこんな状況に至るにつれて、カラヴァッジョの作風は以前の様式と違い、闇を強めて怪しい輝きを帯びてくる。

 

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エマオの晩餐

カラヴァッジョは途中、マルタの聖ヨハネ騎士団に入り、騎士の修行を受ける。

しかしそこはカラヴァッジョ、騎士団に入会したのもつかの間、高位の騎士を襲撃して逮捕され地下牢に収監されてしまうのだ。

ホントこりない人だなぁと思うけど、逆にその徹底した姿勢は凄い!

 

二週間後脱獄に成功したカラヴァッジョはシチリア島のシラクーザに渡る。

 

カラヴァッジョには知り合いやツテがあったので一時的な滞在場所があったのはラッキーだった。

 

滞在中に絵が描けたからだ。

 

しかもこんな危険な生活の中でカラヴァッジョの表現はどんどん深みを増していく。

彼の内面を反映したのか闇は濃くなり救いを求めるように一筋の光が落ちてくる。

ラザロの復活

ラザロの復活

このラザロの復活も素晴らしい!

復活しようとするラザロに降りかかる光がこの上なく優しく僕には映った。

 

カラヴァッジョは絶望の中で見出した諦観というか、深い心の深淵を照らす光を表現したのではないか?

 

 

僕はカラヴァッジョのここが大好きだ!

 

 

まさに芸術の深淵といえる魂の光。

そんな一瞬をカラヴァッジョは捉えている。

 

まさに生きることと創造が密接に結びついた創造人生である。

 

 

 

ナポリに渡ったカラヴァッジョは騎士団に待ち伏せされて復讐の手にかかり、瀕死の重傷を負ってしまった。

 

 

追い詰められれば追い詰められるほどその作品の闇は濃くなり、筆触は荒くなっていく。

逃亡生活のために落ち着いて描く余裕がなかったのだろう。

 

慈悲のある七つの行い

慈悲のある七つの行い

この絵のように劇的な人物の身振りや緊密な構成によって見るものを画面に引き込む力。

壮大なバロック絵画の出発点ともいえる要素だ。

 

一方ローマではカラヴァッジョの作品を待ち望むパトロンたちの活動で画家を許す動きが盛んになってくる。

カラヴァッジョも作品を送ったりしてこれを後押ししていたようだ。

 

1610年7月許しをもらえるメドをつけたカラヴァッジョはついにナポリを離れてローマに向かう。

しかしその途上ポルト・エルコレで熱病に倒れて息絶えたカラヴァッジョ。

 

壮絶すぎるその人生はたった38年に過ぎなかった。

 

 

カラヴァッジョの自己表現とは!


 

聖マタイと天使

聖マタイと天使

カラヴァッジョは写実的な絵を描くのが非常にうまかった。

事物をそっくり、本当にそこにあるかのようなリアリティをもって描くことが出来た。

 

カラヴァッジョ自身、画家は自然を正確に描けることの重要さを説いている。

 

ではカラヴァッジョの何が西洋美術史を革命したと言えるのか?

 

キーワードは「光と闇」

 

キアロスクーロとは明暗を表わす意味で、カラヴァッジョは絵画の中に明暗を劇的に使う手法を持ち込んだ。

 

どう持ち込んだかというと、ある一方向から入る一筋の光を使って。

 

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背後の壁に斜めに射す光はカラヴァッジョのトレードマークと言える。

 

その光は空間だけでなく神の恩寵としての光も暗示させる。

光自体に意味が与えられ、日常という設定でありながら軌跡が起きている神聖な空間に場面を変容させているのだ。

 

それまでのルネサンス美術というのは光がまんべんなく満たされた状態で描かれていた。

ルネサンスを代表するボッティチェリの絵画

ルネサンスを代表するボッティチェリの絵画

 

モノが見えるというのは光があるからで、対象に反射した光が僕たちの目に入って認識される。

 

カラヴァッジョはこの光の量を極端に絞った。

そして強烈に闇と対比させたのだ。

 

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ロレートの聖母

このロレートの聖母も最高に好きだ!

この絵が放つ神聖さに満ちた雰囲気、これぞカラヴァッジョである。

一般人の前に聖母マリアと幼子キリストが現れる瞬間を描いた絵だ。

 

 

光をいちばん強く引き立てる方法がある。

それは光の隣に闇を配置する事。

 

真逆にあるモノは対比させることでその個性が引き立つ。

カラヴァッジョはこれを知っており、強烈な闇に一筋の光を対比した。

 

しかも比類なく神聖で、静寂に満ちた、決定的瞬間を捉える形で表現する。

 

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素晴らしいのはカラヴァッジョ自身の心の闇が深まる程に絵画の闇も力を増し、異様なオーラを放って見るものに問いかけてくる。

 

絵画にカラヴァッジョの心が反映されていくのだ。

 

絶望という闇の中に落ちる一筋の光。

僕にはそれが希望の光に見えてならない。

 

洗礼者ヨハネ

洗礼者ヨハネ

 

聖書から題を取った宗教画などが理想的に描かれていたルネサンス絵画に対して、カラヴァッジョは現実の生活に根差したリアリティに目を向けた。

漠然と使われていた理想的なルネサンスの光を、カラヴァッジョはある一方向から差し向けられる意味深なものとして表現した。

 

これは革命的なことであった。

 

光と闇を使った劇的な自己表現。

 

これが西洋美術史を革新し、バロック絵画という新しい潮流を引き起こしたカラヴァッジョの革命であった。

 

 

 

病的なまでに無軌道で破滅的な人生


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至る所で問題を起こし、警察沙汰に何度もなり、最後には殺人まで犯してしまうカラヴァッジョ。

 

これらの犯罪記録からは、怒りや激情を抑えられない衝動的な性格であったこと、軽擦を毛嫌いしていたこと、計画して襲撃する時は夜に背後から襲うことが多かったことなどが分かる。

 

僕は常々 天才と狂気について言っているけどカラヴァッジョ程それを地で行っているのは珍しい。

彼の気質を反映するようにカラヴァッジョは残虐なテーマの絵やメデューサの顔なども描いている。

 

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ダヴィデとゴリアテ

 

こうした凶暴な気質がカラヴァッジョの人生を狂わせ、死期を早めたのであるが、その中から生まれた作品は感動的なまでに静寂だった。

 

外面的な粗暴さに対して、絵画においては光と闇で胸を打つ瞬間を穏やかに捉える。

このギャップがまたカラヴァッジョの魅力だろう。

 

 

 

殺人を犯した画家が高額イタリア紙幣にのっている?


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そんな彼はイタリアで10万リラという高額紙幣になっていた。

日本で言う福沢諭吉のような感じか。

 

それもそうだろうカラヴァッジョの生み出した芸術は素晴らしい!

僕は何度でも言おう。

 

カラヴァッジョは素晴らしい!!

 

僕はゴッホやピカソも好きだけど、絵画だけで言ったらカラヴァッジョに軍配が上がる。

 

カラヴァッジョの神聖さに唯一比肩できるものは、ミケランジェロの壁画「最後の審判」くらいなものだと思っている。

 

だからカラヴァッジョが高額紙幣にのっていたと聞いて驚きはしなかった。

 

キリストの鞭打ち

キリストの鞭打ち

そして歴史を変えるような表現は、比類ない個性から生まれるということをあらためて感じた。

 

カラヴァッジョはご覧のように粗暴なならず者であった。

しかしその個性があって初めて、カラヴァッジョという表現は生まれたのだ。

 

彼がなんとな~くうまい絵を描く、人気のある普通の画家だったら時代を超えて今まで残っていないだろう。

 

永遠な存在になるには突き抜けた何かが必要なんだと思う。

 

実際カラヴァッジョという画家は後の多くの画家に影響を与えはしたけど、死後忘れ去られてしまう。

 

カラヴァッジョの表現は時代と合わず、評価が得られなくて作品も名前も忘れられていた。

しかし20世紀に入ってカラヴァッジョの再評価が行われた。

 

彼はそれまでのマニエリスムという停滞した美術の流れを変えて、バロックという美術の潮流へ導いた最大の革新者だと。

 

レンブラントというバロック絵画を代表する画家がいるけど、レンブラントライトと言われる光の由来がどこから来ているかはカラヴァッジョの作品を見てもらえれば分かるだろう。

レンブラントライトを使ったレンブラントの絵画

レンブラントライトを使ったレンブラントの絵画

 

ルネサンスから続く不動の美術潮流を変えるためにはカラヴァッジョという強烈すぎる個性が必要だったのだ。

 

 

まとめ


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西洋美術の流れを根底から変えた、最も重要な画家の一人と言われるカラヴァッジョ。

その革新性の源は「光と闇」による自己表現にあった。

 

理想化されたものを描くルネサンス絵画に対比して、現実生活に視点を向けた徹底したリアリティで自分の世界を構築した。

 

殺人を犯した末に逃亡しながら絵を描く彼の作品は、闇が強く支配していく。

絶望の中に希望を求めるかのように射す一筋の光。

 

カラヴァッジョはこれを実に劇的に表現した。

カラヴァッジョの光と闇は彼の内面を正直に表していたのだ。

 

粗暴なカラヴァッジョの心の裏にはかくも静寂な、神聖なヴィジョンが宿っていたなんて…

このギャップがたまらなく魅力である。

 

僕がイタリアに行ったら真っ先に見たいもの、それがミケランジェロの「最後の審判」とカラヴァッジョの生絵画なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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粕川裕康/漫画アート芸術家。漫画描きと油絵描きをしており、二つ合わせて漫画アート芸術家!/漫画とアートを組み合わせた創作活動をしています。

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