僕は2016年11月19日土曜日 東京新宿にある損保ジャパン興亜ビル42階にある「カリエール展」を見ると同時に、常設展示でファン・ゴッホの「ひまわり」を見てきた。
僕にとってファン・ゴッホは、人生を変えた芸術家だ。
これまでゴッホの絵画を生で見たことはあったが、代表作「ひまわり」を直に見たことは一度もなかった。
今回損保ジャパンにあるゴッホのひまわりを見れたので、その感想を書こう。
Contents
ゴッホにとってひまわりとはどんな位置にある作品か?
ゴッホは代表作となる、花瓶に刺したひまわりの油彩画を人生で7枚描いた。
そのうち6枚のひまわりの絵が現存する。
残り1枚のひまわりの絵は、戦争中に燃えてしまったのだ。
なんてもったいないことだろうか!
ゴッホは自分が描いた作品を、そのままコピーして描くことがある。
ゴッホは自分で描いたひまわりを、同じ構図で描き直しているのだ。
今回損保ジャパンで見たひまわりは自己模倣のひまわりではなく、記念すべきひまわりである。
損保ジャパンにあるひまわりは、1888年11月~12月初頭に、南フランスのアルルで描かれた作品だ。
この時期ゴッホはアルルの黄色い家に住んでおり、1888年10月にゴーギャンとの同居生活が始まっている。
ゴッホは、年上で独自の作風を持つゴーギャンを尊敬していた。
ゴッホは、ゴーギャンが黄色い家に来てくれるよう、弟を通して何度も要請をかけていた。
ようやく黄色い家に来てくれることになったゴーギャン。
ゴッホはゴーギャンが来てくれることに、とても喜んだ。
ゴーギャンに自らの才能を示したいがために描いたのが、ひまわりの絵だ。
ゴッホはゴーギャンに見せようとひまわりの絵を数点描いており、その一つが損保ジャパンにあるひまわりなのである。
ゴッホは1888年にアルルで到達した自身の作風を、ゴーギャンに見てほしかったのだろう。
さすがのゴーギャンもひまわりを見たとき、「これは傑作だ!」と感嘆したという。
一般にゴッホの代表作は「ひまわり」だと言われている。
理由はゴッホが愛した黄色を大胆に使い、ひまわりに自分を投影して描いたからだろう。
実際ゴッホは、ひまわりのように無邪気で開放的な人物だったという。
ゴッホと言えば気難しい変わり者のイメージがあるけど、性格の根幹には、ひまわりのような明るさがあったのだろう。
僕が大好きなゴッホの言葉に、こんなものがある。
「この太陽、この光、どう言ったらいいのか良い言葉が見つからないから
ただ黄色、薄い硫黄の黄色、薄い金色のレモンという他はない
この黄色が実に素晴らしいのだ
ああテオ(弟)、君がいつの日か南フランスの太陽を見て、僕と同じように感じてくれたらいいと思う」
~ファン・ゴッホ
これはゴッホがアルルに滞在して絵を描いている時期に、弟へ向けて書いた手紙である。
ゴッホはアルルを日本のように考え、太陽の輝く野外で制作した。
燃えるような太陽の下、ひまわりがかもし出す黄色の魔力に、ゴッホは憑かれたのだろう。
僕は上のゴッホの手紙を読むとき、胸が熱くなるような感動を受ける!
ゴッホは牧師の親を持ち、父親とはそりが合わなかった。
親からの抑圧を受け、他人からの理解もなかなか得られなかったゴッホ。
そんなゴッホが絵を描くことで自身を開放し、絵によって喜びを語る姿が、心に響くのである!
ゴッホは心の叫びを、色彩に託した。
ゴッホは対象をありのままに描かず、ミケランジェロのように意図的に誇張する。
シンプルで力強い、永遠の印象を与える作品。
ファン・ゴッホはそんな絵画を作ったのだ。
ひまわりにはゴッホの個性が結晶化され、大好きな黄色を使って自己表現する男の魂が込められている。
だからゴッホのひまわりは、人々を魅了し続けるのだろう。
人生初!損保ジャパンにあるゴッホ「ひまわり」の感想
僕が初めて、生でひまわりを見たときの第一印象は以下だ。
「ゴッホのひまわりって、こんなに大きな作品だったのか!」
損保ジャパンにあるゴッホのひまわりは、だいたい100cm×76㎝ほど。
正直すごく大きい絵だと思った。
僕の感覚だともっと小さいサイズだと思っていたが、この大きさである。
あ~、ゴッホのひまわりってこれか!と思った。
これだけデカいキャンバスを相手に、花瓶に生けられた数本のひまわりを描くシンプルな構成!
この絵の潔さに、ぼくは感銘を受けた!
ゴッホには、小細工は存在しない。
いつも直球ストレートである。
クリムトのひまわりのような、しゃれっ気はない。
ただもう率直に、自分自身をひまわりに託して自己表現している感じがするのだ。
損保ジャパンにあるゴッホのひまわりは、大量の絵具で盛り上げるように描かれている。
ただでさえ高い油絵具を、このサイズのキャンバスに大量に塗り付けるのは、金のないゴッホにしたら覚悟がいったのではないか?と思った。
ゴッホは生活費と画材費の全てを、弟テオからの仕送りに頼っていたから尚更だろう。
弟テオは画商をしており、兄の絵も扱っていたが、思うようには売れなかった。
損保ジャパンにあるひまわりが描かれた当時の、ゴッホのリアルな経済状況が気になったのだ。
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損保ジャパにあるゴッホのひまわりは「耳切り事件」前に描かれた
実は損保ジャパンにあるひまわりを描いたすぐ後、ゴッホは耳切り事件を起こす。
当時同居していたゴッホとゴーギャンは、お互い強い個性の持ち主だったため、事あるごとに意見が対立していた。
対立すると、ゴーギャンを立ててゴッホが折れていたようだ。
しかし、ついに対立は表面化する。
一緒に酒を飲んでいる時、逆上したゴッホがゴーギャンにグラスを投げつけた。
ゴッホに嫌気がさしたゴーギャンは、真夜中に一人でユゴー広場を散歩していると、後から足音がする。
ゴーギャンが後ろを振り向くと、取り乱したゴッホが手にカミソリを持って立っていた。
この時ゴーギャンがにらみつけると、ゴッホは立ち去ったという。
ゴーギャンは危険を感じ、この日は別の場所で泊まった。
一人黄色い家に帰宅したゴッホは、自らの耳をカミソリで切り落とす。
そして、馴染みの娼婦に切り取った耳を届けに行ったという。
この事件を知ったゴーギャンは、一人アルルを去った。
ゴッホが耳を切った事件は、新聞に載ってしまう。
まもなくゴッホは、サンレミの精神病院に収容されるのである。
これをゴッホの耳切り事件という。
損保ジャパンにあるひまわりは、耳切り事件のちょっと前に完成した作品である。
そのせいか、ひまわりの幾本かは力なさそうに垂れ下がっているのが印象的だ。
天才と狂気は紙一重といわれる。
ぼくはゴッホの気狂いじみた行動に、天才芸術家の伝説性を感じるのだ。
この伝説性も相まって損保ジャパンにあるゴッホのひまわりは、競売で日本円にして58億円の値段で競り落とされた。
損保ジャパンにあるゴッホのひまわりは、まさに伝説のひまわりなのである。
損保ジャパンにあるゴッホのひまわりを見た感想の最後に
ここまで損保ジャパンにあるゴッホが描いたひまわりの感想やドラマについて見てきた。
損保ジャパンのひまわりは狂気の兆候を発するゴッホの、精神的な動揺を象徴しているのかもしれない。
狂気の前兆を匂わせるように、垂れ下がったひまわりが目をひくのだ。
狂気の兆候があるとはいえ、力強く咲き誇り、自身を誇示するひまわり。
そんなひまわりが、ゴッホの愛する黄色で大胆に表現されている。
損保ジャパンで見たゴッホのひまわりに、僕は強烈なパワーを感じた。
ひまわりの裏にある、ゴッホの人間的な苦悩や葛藤も垣間見た。
画家はそれら自己の錯綜した魂を、絵によって表現するのだ。
画家はウソ偽りない自己の魂を、絵で表現するのだ。
ファン・ゴッホの素晴らしさは、この率直さにあるのだ!
ゴッホの真摯な自己表現に、僕は感動したのである!
あなたも損保ジャパンにあるファン・ゴッホのひまわりを見る機会があったら、思い出してほしい。
ファン・ゴッホという芸術家が、自らの人生をかけて自己表現した、魂のひまわりだということを!