どうも、漫画アート芸術家の粕川です(@artkasukawa)!
本日は漫画のカケアミ、ナワアミの描き方のコツや使い所について解説していきます。
カケアミといえば、漫画における効果の代表格ですね。
漫画は基本的に白黒で描かれるので、背景などの効果をカケアミなどの技法を使って表現します。
僕は漫画を描く時、カケアミを多用します。
カケアミはモノの質感や、陰、不気味な感じを出しやすいので、便利なのです。
今回は僕が実際に漫画でどういう所にカケアミを使っているのかも含め、カケアミ、ナワアミの描き方、アート的見地から見た本当のカケアミとナワアミの役割についても書くので、ぜひ最後までご覧ください。
2021年11月02日追記
漫画のナワアミ&カケアミネタで描いた4コマ漫画があるので、まずはそちらをご覧ください♪
前後の「もっとがんばれ!バカオくん」は以下リンクに♪
Contents
漫画のカケアミとナワアミとは?
カケアミとは白黒印刷の漫画で疑似的に濃淡をつける技法で、線をかけ合わせることで表現します。
カケアミには、以下のような種類があります。
カケアミの種類:1カケ
1カケは均等の距離と長さで、直線を並べて描くカケアミです。
線の束を少しずつランダムに、角度を変えて描くのがコツです。
カケアミ線の角度を変えるときは、紙を回転させましょう。
一番線が引きやすい角度から線を描くのがコツです。
1カケは、主に薄い影を表現する時などに使われます。
カケアミの種類:2カケ
2カケは90度でクロスさせるカケアミです。
2カケはタテとヨコで交差するように線を引くので、描きやすいです。
2カケは、1カケよりも濃い濃度が表現できるカケアミです。
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カケアミの種類:3カケ
3カケは2カケに、さらに1本線を加えて描くカケアミです。
3本の線を60度の角度で交わらせて描くと、キレイに見えます。
3カケは線を交差させる角度がずれると、線が重なって美しく見えないことがあります。
3カケを描くときも、60度づつ紙を回転させて線を引くのがコツです。
カケアミの種類:4カケ
4カケは3カケに、さらに反対側から斜め線を引きます。
4カケまでまで来ると、だいぶ濃度が濃く見えますね。
カケアミといった時、最も一般的なのがこの4カケです。
必要であれば4カケにさらに線を足して、濃くすることも可能です。
カケアミの種類:カケグラ
カケグラとは、カケアミのグラデーションのことです。
濃いカケアミから薄いカケアミになるように、段階的に描きます。
濃いカケアミでは4カケやそれ以上のカケアミを描くことがあります。
例えば5カケから4カケ、3カケから2カケのように、だんだんカケアミの線の数を少なくしていくのです。
カケグラを描くコツは、線数の多いカケアミを描くとき線が重ならないように角度を変えることにあります。
そして段階的にカケアミの線数を減らすことで、自然なカケグラに見えるようになります。
一番濃い所はベタの黒塗りにして少しずつ濃度を薄く(線数を減らす)しながら描く、というカケグラの描き方もあります。
一番暗いところをベタにすると、闇からだんだん光が出る具合が描けるので、漫画で仕えるシーンがありそうです。
カケアミを描く時のコツやポイント
カケアミを描く時はあらかじめ正方形のマスを下描きをしておき、その中に線を引いていくのがコツです。
以下画像のように、マス目を同じ角度で並ばせないようにして下さい。
角度が同じマスが並ぶと、単調なカケアミになってしまいます。
線の角度を変える時は、原稿を回転させて自分が最も線を引きやすい角度から描くのが、キレイにカケアミを描くコツです。
またカケアミは定規で線を引いた方が良いのでは?と思うでしょう。
しかしわざわざカケアミに定規を使っていると時間がかかるので、フリーハンドで描きます。
フリーハンドで描くことにより独特の人間味ある線が描け、味わいが出るのです。
またひたすらカケアミやナワアミを描くことでつけペンで線を引く練習になり、つけペンで絵を描くトレーニングに繋がります。
つけペンで絵を描くためには、キレイな線が引ける必要があります。
つけペンできれいな線を引く練習になるのがカケアミ、ナワアミを描くことなのです。
カケアミを描き終わったら、下描きした正方形のマスは消しておきます。
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ナワアミ
ナワアミ(カケナワ)とは、複数の線を流れのなかで交差させながら描く技法です。
ナワアミは初めに台形のマスを描いておき、その中に等間隔で同じ太さの線を数本ずつ引いて描くのがコツです。
ナワアミを描き終わったら下描きで描いた台形の線は消しておいて下さい。
カケアミやナワアミの使いどころ
カケアミやナワアミは漫画を描くときに、使いどころの多い技法です。
白黒印刷されることを目的に描く漫画では、トーンを使わなければグレーの色調が出ません。
しかしカケアミやナワアミを使うことによって、独特なグレーの感じが出せるのです。
単にグレーの色調を出したいなら、トーンを貼るという方法があります。
そこでカケアミやナワアミを使うのは、単にグレーの色調を出す以上の表現的な目的があると思います。
僕は漫画を描く時カケアミを多用すると書きました。
カケアミを手描きで描くのは、非常に手間がかかります。
漫画制作ソフトや切り貼り用のトーンを使って、グレーの色調を出した方が効率的でしょう。
なのになぜあえてカケアミを多用するかというと、カケアミには独特の手描きでしか出せない「雰囲気」があるからなのです。
僕はカケアミを影や、モノの質感、不気味さを出す時などに使います。
カケアミはフリーハンドで描くので、人の手から描かれる線の味や、微妙な線のブレ、ズレなどが独特の雰囲気をだしてくれるのです。
僕はこのカケアミやナワアミが発する異様な雰囲気が好きなので、よく使うのです。
例えばナワアミの線の流れを見ると、僕は晩年の揺らぐような短線の連なりと色彩で絵を描いたファン・ゴッホの絵画を思い出します。
晩年のゴッホはナワアミのような流れの線で、糸杉や星月夜や自画像を描いたのです。
僕はナワアミという技法は、漫画におけるゴッホ表現の一種だと考えています。
ナワアミだけでなくカケアミもグラデーションを描けるという意味以上に、もっと別な表現として使えるように思います。
だから僕はカケアミやナワアミを空に使ったり、樹木の質感などに使用するのです。
以下は僕が漫画「幻想の森」の一場面で樹木の質感を描く時に、カケアミを使っている映像です。
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カケアミは様々な効果として使える
カケアミやナワアミは以下のような場面で使えるでしょう。
●人物や建物などの影を描くとき
●微妙な薄暗い空間を処理するとき
●物体の質感を出すとき
●異様な雰囲気を出したいとき
ほかにも工夫次第で。いろいろなものを表現できる技法です。
カケアミは線の太さ、細さを分けて描くことで、見え方は違ってきます。
僕は漫画を描く時、出来る限り自分の手から生まれる線で絵を構成することにより、漫画の絵に生命感を与えたいと思っています。
なのでトーンを使えば済む所でも、あえて手描きでカケアミを使ったりします。
例えばカケアミ、ナワアミを以下のような場面で使っています。
ちょっとした影や微妙な質感などを表現したい時、線の束を描くことで、人の手から生まれる線の味を出せるのです。
アート的見地から見たカケアミ、ナワアミの本当の役割
カケアミ、ナワアミはグレーの調子を表現する以上に、人間の手から生まれる生命感を持った異様さも表現出来ます。
むしろカケアミ、ナワアミの本当の強みは、ここにあります。
僕は以前デザイン系の専門学校に通っていた頃、カケアミ、ナワアミを使用して以下の絵を描きました。
これは線画だけで、幻想の森を描いた絵です。
この絵は色々描いてあるように見えますが、モノの質感をカケアミやナワアミ、ハッチングなどの効果を使って描き、異様な空気感を出したいと考えました。
カケアミ、ナワアミは線の集合体なので、線の組み合わせによって様々な効果を出すことが出来るのです。
表現としてカケアミ、ナワアミを考える時、必ずしも線が90度や60度で交差している必要はないと思います。
対象を的確に表現するためなら、カケアミやナワアミを自由に変形して構わないのです。
「線の集合によって、対象を表現する」
これがアート的見地から見たカケアミ、ナワアミの本当の役目だと僕は思っています。
トーンを貼ることで生まれる機械的なグレーではなく、人間の手から生まれるぎくしゃくした、違和感のある異様な効果が出せる点こそ、カケアミ、ナワアミの本当の強みなのです!
カケアミやナワアミを使って、人間の手からしか出せない効果を描いてみましょう!