「漫画のキャラクターを作りたいんだけど何か参考になる本はないかな?」
って思う人がいるのでは?
それなら小池一夫著「人を惹きつける技術~カリスマ劇画作者が指南する売れるキャラの作り方~」をおすすめします。
この本は講談社a新書で出版されており、割と薄い本にしては中身の濃い内容で書かれています。
本の外見やタイトルがビジネス書っぽいので一瞬とまどうけど、中身は漫画キャラクターの作り方がガチで書かれています。
またキャラクターの概念をビジネスに応用して読める内容になっているので、キャラクター作りをしている人以外でも参考になる部分があるかもしれません。
「人を惹きつける技術」を読むことで創作物におけるキャラクターの重要性に気がつき、物語を考える以前にまずキャラクターを作りこむ事が大切だと分かります。
クリエーターとしてとても参考になる内容だったのでこの記事では特にヒットキャラクターが持つ要素や方程式に着目して、「人を惹きつける技術」の内容をネタバレで紹介していきます!
Contents
「人を惹きつける技術」の著者 小池一夫とは?
「人を惹きつける技術」の著者は、カリスマ劇画原作者の小池一夫氏。
小池一夫氏は漫画原作者、作家、脚本家、作詞家として活躍している方で、1977年には後進を育てるという目的で「小池一夫劇画村塾」を開いています。
この塾の門下生には高橋留美子氏(うる星やつらの作者)、原哲夫氏(北斗の拳の作者)、板垣啓介氏(刃牙の作者)、堀井雄二氏(ドラゴンクエストシリーズを生んだ人)など錚々たる顔ぶれがいます。
小池一夫氏は漫画キャラクターの創作論に定評があり、「漫画=キャラクター」というとても重要な概念を残されています。
「人を惹きつける技術」の目次
小池一夫氏の著書「人を惹きつける技術」の目次は以下の通り。
・はじめに
・第一章⇒国境、時代、メディアーボーダーを越えて異文化と共生する「キャラの力」
・第二章⇒ヒットするキャラの三角方程式
・第三章⇒ヒットキャラが持つ「九か条」
・第四章⇒キャラを魅力的にする「プロファイリング」
・第五章⇒キャラクター作りの㊙テクニック
・おわりに
・小池一夫作品リスト
「人を惹きつける技術」は、キャラクターの魅力的な起て方や、ヒットキャラクターに必要な要素など、キャラクターの作り方が知りたい人におすすめしたい本です。
ページ数は200ページに満たず、それほど堅い内容ではないので結構サクッと読める本です。
ドラマよりキャラクター!
僕が「人を惹きつける技術」の中で一番印象深かったのが、「漫画=キャラクター」という概念でした。
漫画はドラマよりも先にキャラクターを作りこむ、という教えです。
なぜなら個性あるキャラクターがいれば、ドラマは後からついてくるからです。
確かに個性の強いキャラクターを先に作り、そのキャラを色々な状況に置くことで物語は展開していくというのは、僕も漫画を描いているので分かります。
キャラクターがまず先にあり、このキャラを面白く演出するためにはどんな物語、エピソード、キャラがいればいいのか?とキャラから逆算して考えていくことが大切なようです。
漫画を描こうとしたとき多くの人は初めに物語を考えるかもしれません。
物語も大切なんだけど物語の上を歩くキャラクターこそが核であり、キャラをしっかり作りこむことでドラマは後からついてくるという考え方なんですね。
小池一夫氏は初めキャラより物語を重視されていたようですが、その頃は思うような結果が得られなかったといいます。
しかしキャラクターの重要性に気づき、キャラクターを中心に漫画原作を書き始めると、「子連れ狼」などのヒット作を連発するようになりました。
「漫画はドラマ以上にキャラクターが大事」という教えは、さいとうたかを氏や石ノ森章太郎氏、「ビッグコミック」の初代編集長である小西雄之助氏達から伝えられたようです。
例えば漫画を作るとすれば、まずはキャラクターの外見や特徴を考えて、以下のような要素を設定していくということです。
・性格
・年齢
・どこに住んでいる?
・どんな癖がある?
・自分のことを何て呼んでいる?
・好きなもの、嫌いなものは?
・実現したい夢は?
・人間関係は?
etc…
こうして出来たキャラクターの魅力を最大限生かすためには、どんな物語にする?どんなキャラクターと絡ませる?どんなアイテムやエピソードを用意する?etc…と考えていくことでキャラの起った漫画が出来上がるのでしょう。
「キャラが起つ」とは、そのキャラクターの個性が他よりも際立っているということです。
漫画などの創作物では、物語の要素も大切だと思います。
しかしその物語自体がキャラクターあってのものなんだなと、「人を惹きつける技術」を読んで改めて思いました。
「人を惹きつける技術」のキャラクターを起てる方程式
ここでは「人を惹きつける技術」に書いてある、キャラクターを起てる方程式についてネタバレで書いていきます。
キャラクターを起たせるにも、数学みたいな方程式があったようです!
1.まず大切なのが「印象的なキャラクターの登場シーン」。
これは漫画でいう冒頭の事で、読者の頭に刻み込まれるような主人公の登場シーンを考えます。
主人公はその他のキャラとは存在感の違う登場のさせ方をして、目立たせる必要があるということです。
2.主人公登場後は漫画のテーマに合わせてキャラクターを動かしていき、物語を進めていきます。
漫画のテーマという背骨に沿って、主人公やわき役たちを動かしていくのがポイント。
3.漫画のクライマックスは読者に見せたいテーマを面白く、スリル満点に見せていく。
漫画のクライマックスは読者が一番ハラハラドキドキする場面ですね。
ここでも漫画のテーマが、クライマックスと結びついています。
4.漫画のラスト、事件や問題が片付いたらキャラクターの個性を生かした「遊び」のシーンで物語の幕を閉じる。
「キャラの個性を生かした遊び」とは、クライマックスで緊張した読者の気持ちをホッと緩ませてくれるような、物語の余韻を感じさせてくれるような、ここで物語は終了だよと読者に伝えるような、そのキャラ独自の行動です。
「人を惹きつける技術」によると、これら一連の流れが「キャラクターを起てる方程式」なようです。
「子連れ狼」も、まずキャラクターが先に作られていた
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「人を惹きつける技術」には小池一夫氏の代表作である「子連れ狼」が出来るまでのエピソードも載っています。
この部分は人気漫画のキャラクターが出来る過程が載っているので、とても興味深いです。
僕が印象的だったのは、やはり「子連れ狼」もメインキャラクターの2人が先に作られ、キャラの活かし方を考えるなかで物語が出来ていったという話でした。
「子連れ狼」を作るとき初めにあったアイデアは、侍と乳母車に乗る赤ん坊だけだったようです。
ここから想像を膨らませていき、読者の疑問に答える形で漫画の背景や物語が出来ていったということでした。
キャラクターが先に出来れば、追いかけるようにドラマがついてきます。だから「キャラクターをまず創れ」なのです。
~「人を惹きつける技術」より
キャラクターが歩む道のりが物語であり、ドラマなんだなぁと思います。
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キャラクターは一人では起たない
キャラクターは一人では起たないので、そのキャラを引き立たせる別のキャラが必要になります。
主人公に対して性格の異なる別のキャラクターを置いてみる感じですね。
「子連れ狼」でいえば拝一刀と大五郎がそれにあたります。
例えば赤という色を引きたてたいとき、赤一色を置くよりも隣に別の色を置くことで赤という色の見え方が変わることがあります。
赤と正反対の色を置いて色同士のギャップを見せる配色もあれば、赤と似たような色を置くことで似たような配色にもできます。
このようにキャラとキャラの組み合わせ次第で、そのキャラクターが引き立ったり、埋もれてしまったりするのです。
主人公を起たせるには、別の個性を持つキャラクターと絡めて、そのギャップによって主人公の特質を引き立たせるということです。
そして主人公のキャラを引き立たせてくれるのがライバルの存在だとあります。
例えば「巨人の星」の星飛雄馬と花形満がライバル関係に当たりますね。
・貧乏な家庭で、家族が一丸となり泥臭い努力の末に育てられた星飛雄馬。
・裕福な一家に生まれ、優れた野球能力を持つスマートな美男子の花形満。
個性の異なる二人が競い合うことで、主人公のキャラクター性はより強く浮き彫りになる。
このように主人公とライバルを対立させ、葛藤させることでドラマは作られる、という事が「人を惹きつける技術」には書いてあります。
さらにライバルの他に必要なキャラクターがいます。
それが引き回し役。
・主人公
・ライバル
・引き回し役
「人を惹きつける技術」ではこの3つのキャラクターを「キャラクターの三角方程式」と呼んでおり、キャラを魅力的に動かすために必要なものだとします。
主人公には「弱点」、ライバルには「欠点」、引き回し役は?
キャラクターを起たせる条件として、主人公には「弱点」が必要です。
全てにおいて完璧なキャラクターには読者もつけ入るスキがなく、共感も持ちづらいのでしょう。
誰にも負けない完ぺきな強さを持つキャラクターがいたらその人は誰にでも絶対勝てるので、読んでて面白くないですよね。
だから主人公キャラクターにはどこかに、弱みとなる部分が必要なんですね。
ドラゴンボールの悟空(子供時代)も尻尾を握られると力が抜けてしまうし、ワンピースのルフィは水に弱いという弱点があります。
「もし主人公が弱点を攻められたらどうなっちゃうんだろう?」というハラハラ感が物語に面白さを加えてくれるんでしょう。
それでもやっぱり最強のキャラクターを作りたいと思ったらどうするのか?
その時は最強キャラクターのそばに弱いキャラクターを置いておくと良いようです。
例えば最強最悪の敵キャラがいたら、その横に彼の大切な赤ん坊キャラを置いておくとか。
最強の敵キャラ自体は無敵なんですが、彼の赤ん坊が人質に取られるとやばいじゃないですか。
最強のキャラでもその隣に大切な弱いキャラやアイテムなどを置くことで、それを弱点にすることが出来るんですね。
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ライバルキャラには欠点が必要
ライバルキャラクター(敵)に必要なのが欠点だとあります。
欠点というのは人格、性格上の問題ということ。
例えば人間性皆無の残酷非道なキャラとか、道徳の欠落したキャラとか。
欠点とは性格的、倫理的に外れちゃってる要素のことですね。
これら要素は人間的には欠点であっても、いざ戦いの場では強みに変わったりします。
勝つためなら卑怯な手でも容赦なく使えるとか、相手の命を奪うことに何の躊躇もないとか。
情に負けて敵にとどめを刺すことが出来なかった主人公は、敵に仲間を呼ばれて囲まれてしまい、窮地に陥ってしまうこともあるかもしれない。
いざ命を懸けた戦いの場では、人間味のある性格が逆に仇となることもあります。
人格的な欠点も場合によっては強みとなり、主人公とライバルを対比させることでお互いのキャラが起っていくのでしょう。
日常のほのぼのとした世界観の漫画であれば、それに合わせたライバルキャラの欠点を考えれば良いのです。
敵キャラクターに欠点を持たせることで、正々堂々と向かう主人公のキャラがより浮き彫りになります。
引き回し役の役目
それでは「引き回し役」とはどんなキャラクターなんでしょうか?
引き回し役は主人公とライバルの間にいる存在で、主人公のことを読者に伝える存在といえます。
他にも引き回し役の役目は色々あります。
例えば
・トラブルメーカーで、よく事件を起こしては主人公にお世話になる役目
・主人公より先に失敗して、主人公のキャラを引き立てる役目
・読者が聞きたいことを主人公に聞く役目
・読者が分からないことを説明する役目
etc…
「ゲゲゲの鬼太郎」におけるネズミ男、シャーロックホームズにおける相方のワトソンみたいなキャラクターが引き回し役といえます。
「ゲゲゲの鬼太郎」でいえばネズミ男が勝手なことをして問題を起こし、鬼太郎が事件解決に動くとか、よくあるパターンです。
引き回し役が人質になったり、主人公をピンチにおとしめたり、勝利のヒントを与えてくれることもあります。
引き回し役は、主人公と読者の間を仲介する役目もあるんですね。
天才探偵シャーロック・ホームズだけだと、彼の行動の意図を読者は分からないこともあるでしょう。
ワトソン「ホームズ、君は何をやろうとしているのだね?」
ワトソンが読者のかわりに質問することで、ホームズのやろうとしていることや状況が読者にも伝わる。
読者が主人公や状況に対して疑問をもったら、そこの説明をしたり、読者の代わりに質問をするという役目も引き回し役にはあるんですね。
引き回し役は読者のためにお笑いでいうボケやツッコミを、物語の中で演じてくれるキャラだといえます。
引き回し役が主人公やライバルの間で動くことで、物語も展開しやすくなっていくんですね。
主人公にはオーラ、ライバルにはカリスマ性を
もう一つ主人公に必要な要素に「オーラ」があると書いてあります。
オーラとは人を惹きつけるような魅力であり、作品に込められた作者の魂、分身のようなもの。
つまり主人公には作者の人間味がにじんでしまうものであり、それが主人公の持つオーラのようです。
一方ライバルに必要なのは「欠点」であり、それに繋がる「カリスマ性」だとあります。
敵のキャラクターには「カリスマ」性をつけます。
人を恐怖で支配する冷たい闇の魅力をつけるのです。
~「人を惹きつける技術」より
社会学者のマックス・ウェーバーが「恐怖などで人民を支配する」ことに対して「カリスマ的支配」と書いたことから、カリスマという言葉が出てきました。
人が怖くなっちゃうような威圧的なオーラを持つ支配者、これが本来のカリスマ性ということなんですね。
残酷だったり、卑怯だったりと性格的な欠陥をつきつめると、それはカリスマ性にもなるのでしょう。
ドラゴンボールのフリーザはナメック星の人達を虫けらのように殺しましたが、その強さは当時カリスマ的に絶大でした。
まさにフリーザが性格的な「欠点」と「カリスマ性」を兼ね備えたキャラクターの典型です。
太陽のように人を包み込む主人公の「オーラ」と、人を震え上がらせるようなライバルの「カリスマ性」との対立。
ここに読者と主人公をつなぎ、物語を動かすために色々動いてくれる「引き回し役」が加わります。
「人を惹きつける技術」では、この3者のキャラクターを「キャラクターを起てる三角方程式」と呼んでいます。
キャラクターにも数学みたいな方程式があったんですね(笑)
キャラクターを起てるために必要な3つの要素をまとめると
1.主人公⇒「弱点」と、人を暖かく包み込むような「オーラ」を持つ。
2.ライバル⇒性格や人格的な「欠点」と、人を恐怖で支配するような「カリスマ性」を持つ
3.引き回し役⇒主人公と読者を橋渡しする役、ドジを踏んだり、仲間をピンチにしたり、時には勝利のヒントを与えてくれる存在。
読者のために「ボケ」や「ツッコミ」に徹してくれる役。
ヒットするキャラクターが持つ要素とは?
ここでは「人を惹きつける技術」の第3章に書かれている、ヒットするキャラクターが持つ要素をネタバレでご紹介していきます。
ここで挙げる要素はヒットするキャラクターには必要なものなようです。
1.キャラクターに願いを持たせる
キャラクターには「願望」を持たせることが大切なようです。
「人を惹きつける技術」にはキャラクターに三つの願いを持たせると良いとありました。
人生をかけた大きな願い、日常感じる中くらいの願い、小さなささやかな願いの3つを考えてみようとのこと。
なぜなら何を望んでいるかで、そのキャラクターの価値観が分かるからです。
キャラの願いが分かれば、そのキャラが今後向かう場所も分かります。
またキャラの「望み」が分かれば、「絶対に望まないこと」も分かるので、そのキャラクターらしさがつかめてくる。
「願い」はそのキャラを動かす原動力になるんですね。
「願い」は作者自身が望むものだったり、読者が望むようなものにします。
そんな願いをキャラクターに持たせたり、叶えさせてみる。
自分が理想とする願いをキャラクターが持っていたら、読者は共感してキャラに感情移入できたり、夢が叶うよう応援したくなるでしょう。
願いを持たせることはそのキャラクター性を明確にするだけでなく、読者の願望と繋げることで共感が生まれる要素になるんですね。
2.キャラクターに癖をつける
キャラクターには癖が必要だとあります。
例えばよく爪を噛むとか、驚くと大げさな身振りをするとか、よく下ネタを言うとか…
癖はそのキャラが持つ個性であり、人間っぽさだといえます。
そんな人間臭い癖をキャラクターに発見すると、読者としては感情移入しやすくなるのかもしれません。
3.しぐさでキャラクターの感情を表す
キャラクターには特徴的なしぐさをさせて感情表現をすると良いとありました。
例えば怒ったときには机を拳で叩くとか、鋭い目線で相手をにらむとか、怒ると急に大笑いしだすとかも。
そのキャラらしいしぐさや反応をさせて、キャラの感情を視覚的に表すんですね。
漫画は言葉と共に絵でも見せられるのが強みの表現です。
なので言葉で言えばすむ事でも、しぐさや行動として見せることで読者に伝わりやすくなるんでしょう。
言葉で感情を表すことも大切です。
しかしキャラの思いをあえて目や行動や背中などで示すことで、より印象的に映るのかもしれません。
そのキャラにふさわしいしぐさを用意してみましょう。
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4.持たせる物でキャラクターを起てる
キャラクターに持たせる物でも、そのキャラを起たせることが出来ます。
例えばどこにでもいそうな少年にドラえもんの四次元ポケットをつければ、その少年に注目が集まりますね。
少年自体はごく普通だけど、あるアイテムを持たせることでキャラクターとして起ってしまう状態です。
ごく普通の物でもキャラを起てるために使うことが出来ます。
例えば繊細な心を持つ少女が、もろく儚いガラスの装身具を身につけているとか。
別れ際の恋人同士の手前に枯れかけた花を置いて、間もなく二人は別れるんだろうなって感じさせたりとか。
いつもならジャージ姿の人が、突然高価なスーツを着だすとキャラのイメージに変化が生じます。
物にはそれぞれが持つイメージや意味があるので、それを持たせることで象徴的にキャラクターを表すことができるんですね。
物でなく、動物とか虫でもありでしょう。
巨漢の怖そうな人がクモを見ておびえるとか、貧弱そうな男が実は熊と戦っても勝てるとか、ギャップのある使い方をすると読者の印象に残るかもしれません。
キャラクターに持たせるアイテムでも、そのキャラの個性を起たせることができるのです。
5.噂でキャラクターを起てる
その場にいないキャラクターを「噂」させることによって、キャラクターを起たせる方法もあります。
キャラ本人にはあえて語らせず第三者に噂させることで、読者に期待感や「どんな奴なんだろう?」っていう好奇心をふくらませます。
例えば今度転校してくる学生はとんでもない強者で、街で一番恐れられている不良だと、クラスメートの誰かにささやかせる。
クラスメートは皆どんな奴が来るのかとドキドキしていたら、先生と一緒に入ってきた転校生は眼鏡をかけた体の小さなガリ勉君だった!とかだと意外性がありますね。
でもこのガリ勉君は眼鏡を取ると恐ろしいケンカ魔に変わっちゃうとか(笑)
現実世界でも本人が自分の事をほめるよりも、第三者の口からほめられた方が説得力があったりします。
主人公はあえてしゃべらせず、周りの誰かに語らせることで、主人公のキャラを起たせるという方法です。
6.キャラクターに謎を持たせる
キャラクターを起てるには、そのキャラに謎を持たせることも大切だとあります。
人間は謎を出されると、それを解きたくなる本能があるようです。
分からないものがあれば、分かるようにしたいという気持ちが出てきてしまうのでしょう。
キャラに何らかの謎をつけることで、この謎を解きたくなって読者は読み進めてしまうという事です。
例えば主人公には人に言えない辛い体験があって、その過去が原因で主人公は性格がねじ曲がってしまった。
でも過去に何が起きたのかは誰にも分からないという状況とか。
謎を物語やキャラに持たせることで、何でそうなったのかを知りたくなった読者は思わず先を読んでしまう。
ミステリー小説なんてこれの典型です。
キャラや物語やアイテムなどにミステリーを持たせて、この謎によって最後まで引っ張っていくという見せ方もあるんですね。
7.キャラクターをある状況下に置く
状況でキャラクターを起てるという方法もあります。
ある状況にキャラクターを置いた時にどう反応するかによって、そのキャラの性格や特徴が分かります。
例えば道端で100万円をひろった時に、警察に届けるのか、お金を自分がもらってしまうのか、紙飛行機にして全部どこかに飛ばしてしまうのかでも、そのキャラがどんな奴なのかがうかがえます。
ある状況に対するキャラの反応を描くとき、そのキャラがこれまでどんな人生を歩み価値観を持っていたのか?今後どういう方向に向かっていきたいのかが伝わるように書くことも大切とありました。
キャラの行動一つとっても、それをさせたに至る過去の体験や思いがあるはず。
こういったキャラのバックボーンを感じるように、状況に対するキャラの行動を描こうということなのでしょう。
ある状況に対してどう反応するかはキャラによって違ってきます。
この状況に対するキャラの反応を描くことで、キャラの個性を反映させられるんですね。
極限状態はキャラを起てやすい
戦争などの切羽詰まった極限状態にある時、キャラを起てやすいとあります。
「人を惹きつける技術」で印象的な言葉がありました。
「物語とは争いとそれの解決を描くもの」
~「人を惹きつける技術」より
スポーツ漫画やバトル漫画なら物語には分かりやすい戦いがあります。
同じようにホームドラマや恋愛ものにも争いがあるんです。
・ホームドラマなら、家族の中に起きた問題を解決すること。
・恋愛ものであれば、恋のライバルとの駆け引きとか。
生物には闘争心という生存本能があって、これのおかげで人間はこれまで成長し、文明を築いてきました。
一方、闘争心は戦争などの争いも生み出しています。
現代のスポーツや様々な娯楽の中にも、人が本能的に持つ闘争心の要素がひそんでいるんですね。
なのでキャラクター達が体験する物語にも「対決」の要素が出てくる。
特に死んでしまうかもしれない極限的状況は人間の本性が出やすいので、キャラクターを起てやすいといいます。
周りが死んでいく中で自分だけが生き残っている状況は想像すると怖いですね。
死んでてもおかしくない極限状況の時、そのキャラはどう反応するのか?
ここを考えることで、キャラの本性が見えてくるのかもしれません。
8.読書や体験からセリフを探る
キャラクターに魅力的なセリフを言わせるにはどうしたらいいのか?
まず大切なのは漫画だけから漫画を学ばないことだとあります。
ここに出てくるのが「読書」です。
漫画を読むのはいいのですが、小説や詩など他ジャンルの読書を幅広くすることが大切だと力説されています。
読書をすると色んな言葉を知ることができ、知識を得られ、またセリフの表現方法なども分かってきますよね。
例えばある詩人の詩を読んで、「こういう言葉の使い方があるのか。この表現は漫画のあの場面で応用できるかもしれない」みたいな発見もありえます。
人の作品をそのまま盗用してセリフにするのはいけないけど、言葉の感覚とか、使いどころなど、読書することで分かってくる部分も多いでしょう。
小池一夫氏は読書して良いと感じた部分はメモする習慣があるそうです。
メモしておくことで忘れることを防ぎ、いざ必要な時にアイデアとして参考にすることが出来ます。
こうして読書で得た知識を自分の血肉と化しておくことで、創作に生かせるようになるとのこと。
読書だけでなく色々な体験もしておくと良いともありました。
色んな状況を経験して、ある状況下ではどんなセリフを言えばいいのかを体験的に知っていると、漫画でも使えるようになります。
セリフにおいてもキャラを起たせるためには、体験や読書の力を借りることが大切なんですね。
「人を惹きつける技術」のヒットキャラクターが持つ要素のまとめ
ここまで小池一夫著「人を惹きつける技術」の中から、ヒットするキャラクターの要素や方程式について見てきました。
「人を惹きつける技術」で重要な点は「漫画=キャラクター」という概念です。
漫画を作るときは物語よりもまずキャラクターを作りこみ、キャラを魅力的に演出するにはどうしたらいいかを考えて、物語やその他設定を決めていくという流れになります。
またキャラクターは一人では起たず、主人公の他にライバルと引き回し役が必要になります。
それぞれが持つ要素としては~
・主人公⇒「弱点」と「オーラ」
・ライバル⇒「欠点」と「カリスマ性」
・引き回し役⇒読者と主人公の橋渡し役であり、物語を展開させるうえで色々と動いてくれる。読者のために「ボケ」と「ツッコミ」に徹してくれる役。
ヒットキャラクターが持つ大切な要素としては~
1.キャラクターに願いを持たせる
2.キャラクターに癖をつける
3.しぐさでキャラクターの感情を表す
4.持たせる物でキャラクターを起てる
5.噂でキャラクターを起てる
6.キャラクターに謎を持たせる
7.キャラクターをある状況下に置く
8.読書や体験からセリフを探る
この記事では「人を惹きつける技術」の中からヒットするキャラクターの要素を抜き出して紹介しましたが、この本にはまだキャラクター創作をする上で大切なことがたくさん書かれています。
例えば「キャラクターの起て方の実践法」や、「ビジネスの場にキャラクターの概念を持ち込んで考えることの大切さ」があります。
第五章の「キャラクター作りの㊙テクニック」では、具体的なキャラクター創作の方法や、作家としてのマインドについて、アイデアの出し方、漫画を構成する三大要素として「構成・構図・消去」、短編作品を仕上げるコツなどが書かれています。
漫画キャラクターの創作法のみでなく、キャラを漫画の中でどう生かすかといった部分にも触れられているのでとても参考になりました。
「人を惹きつける技術」は、まえがきにある小池一夫氏の写真以外挿絵や画像がないので、文章だけの本に拒否感のある人は読むのが大変かもしれません。
しかしページ数が少なめな割には内容が濃く、サクッと読める気軽さを僕は感じています。
ヒットするキャラクター創作法を知りたい!って方は是非「人を惹きつける技術」の一読をどうぞ。
以下の記事では短編漫画のキャラクターを作るためのキャラクターパターンについて書いています。興味のある方はご覧ください☆彡