この記事ではダリオアルジェントの映画「ドラキュラ」の感想と一緒に、ダリオアルジェント映画の魅力をがっつり紹介していこう!
僕はこれまでいろいろな映画を観てきたけど、古今東西を通じて最も愛する映画監督がいる。
それがイタリアのホラー映画監督ダリオ・アルジェント(1940年9月7日~)だ。
僕がダリオを心から愛するゆえんは独自の感覚に基づくホラー映画を徹底して撮り続けてきたことにある!
ダリオ・アルジェントといえば「サスペリア」、「シャドー」「インフェルノ」「フェノミナ」「サスペリアPART2」「オペラ座/血の喝采」など不滅の傑作を撮り続けてきたホラーの帝王。
特に1970~80年代にかけてホラー映画史上を揺るがすような傑作を生みだしており、この時期がダリオアルジェントの黄金時代といえる。
ダリオアルジェントはこれまでにない新しいイタリアンホラーの世界を生み出した。
本日はそんなダリオアルジェントのホラー映画の魅力や「ドラキュラ」の感想に迫る!
Contents
ジャッロを代表する映画監督ダリオ・アルジェント
ダリオアルジェントといえばイタリアでジャッロというジャンルを代表する映画監督。
まずはジャッロについて見ていこう。
イタリアには20世紀に登場したgiallo(ジャッロ、ジャーロ)と呼ばれる文学、映画のジャンルがある。
gialloという言葉はイタリア語で黄色を意味する。
ジャッロというジャンルはフランスの幻想文学、ホラー小説、犯罪小説、エロティック文学と繋がりがあるようだ。
1929年にミステリーや犯罪小説を扱うパルプマガジン「ジャッロ・モンダドリ」(表紙が黄色)が出版されて、ジャッロ小説は一躍注目を浴びる。
ミステリー、犯罪、探偵小説を扱うジャッロ小説は1960年代には映画として制作されるようになった。
ジャッロ映画には以下のような特徴がある~
●大量の血を使って演出される殺人シーン
●洗練されたカメラワーク
●特異な音楽
やがてジャッロは殺害シーンを強調するスプラッター映画やイタリア発のオペラも取り入れ、演劇的な要素も持つ独自な映画ジャンルとして成長した。
簡単にいうとジャッロはサスペンス/スリラーを基本に置いたホラー映画。
そんなジャッロ映画を代表するのがダリオアルジェントやマリオバーヴァ、ルチオ・フルチといった映画監督である。
僕はジャッロ映画がものすごく好きで、上にあげた三監督の映画はほとんど観ている。
またジャッロ映画は以下のようなテーマが取り上げられることが多い。
●狂気
●疎外感
●偏執病
これらは僕にとってものすごく興味深いテーマであり、漫画やアートで何としても表現したい!
またジャッロ映画は特徴的な音楽が使用されることでも知られる。
ダリオアルジェントはイタリアのプログレッシブロックバンド「ゴブリン」の演奏を「サスペリア」などで使い、独特な恐怖世界を作りだしている。
ホラーと聞くと幽霊や悪魔を想像しがちだけど、ジャッロはイタリア固有の文化から生まれたホラー映画。
そしてジャッロ映画を象徴する巨人の一人がダリオ・アルジェントなのである。
ダリオ・アルジェントの魅力~理屈よりも感覚
僕が感じるダリオアルジェント最大の魅力は~
●理屈よりも感性で作る作家性
●鮮烈な色彩、音、映像で魅了する芸術性
●幻想的で妖しい、危険な匂いのする恐怖
この三点はダリオアルジェント最強の武器だろう。
ダリオアルジェントの特徴に「理屈よりも感性、感覚で映画を作る」という点がある。
例えばダリオの映画では推理サスペンス物語が使われることが多いけど、謎解き、トリックなどの使い方が雑で物語が破綻しているものが多いという意見もある。
確かに僕もダリオの映画を見ていて、推理モノなのにあっさり最後のオチを片付けすぎという印象を持ったことはある。
しかしこれはダリオアルジェントのマイナス点なのではなく、最強の武器、個性なのだ!!
ダリオは物語の謎解きなど理屈の部分ではなく、視聴覚に働きかける鮮烈で、刺激的で妖しさ抜群の恐怖で勝負しているのだ!
推理サスペンスは物語を進めるための器にすぎず、そこに盛られたホラークリエイターとしての革新的な表現こそダリオアルジェントの魅力である!
だから僕は推理モノとして破綻していようがいまいが関係なく、「理屈なんてカンケーねえ!」と言わんばかりに強引な展開に、最大級の賛辞を送る!
ダリオアルジェントの映画はよくできた推理モノを観たい人が見る映画ではない。
物語の筋なんてちょっとくらいつじつまが合わなくても問題ない。
ホラー映画に美しさや芸術性を持ち込み、鮮烈に演出した天才ホラー作家の個性を観る映画なのだ!
推理ものとしてトリック部分が雑というのは一見弱点に思うだろう。
しかしダリオアルジェントは弱点こそ最強の武器であり、長所なのだという事を教えてくれている!
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ダリオ・アルジェントの魅力~美しく芸術的なホラー映画
ダリオアルジェントがそれまでのホラー監督と決定的に違う点に「ホラー映画に美しさや芸術性を持ち込んだ」ということが挙げられる。
ダリオアルジェントは魅惑的な色彩を映画の中で存分に使ってくる。
例えば鮮烈な赤と緑(補色同士でお互いの色を引きたたせる)の光が入り交じる中でヒロインが恐怖に襲われたりなど。
映画のなかで色が重要なファクターとなっているのだ。
原色を使った色彩で、絵画的な美しさや恐怖を見せてくれる。
また一つ一つのカメラワークがスタイリッシュで、構図も美しい!
小物類の選び方も含めてダリオアルジェントはホラー映画をアートとして見せていたのではないかと僕は感じている。
死体をカメラで映すにしても、気持ち悪さをおさえた美的な感覚をうかがわせるのだ。
ダリオ以前のホラー映画は「悪魔のいけにえ」や「エクソシスト」のようにおどろおどろしい雰囲気で満ちていた。
しかしダリオアルジェントはイタリア特有の芸術的センスをホラー映画に取り入れて、「怖いけど洗練された、妖しく危険な雰囲気」のホラー映画を創造した。
これはホラー映画史上革新的な出来事である!
そんなダリオアルジェントの個性が存分に発揮されたのが1977年6月に発表された「サスペリア」なのだ。
「決して一人では見ないでください」のキャッチコピーが恐怖をそそる「サスペリア」は大ヒットして、ダリオアルジェントの快進撃が始まってゆく。
女性ファンが多いダリオ・アルジェントの映画
ダリオアルジェントの映画は意外にも女性ファンが多い。
ダリオの作品はサスペンス要素の強いホラー映画といえる。
このサスペンスタッチの物語が女性に受けているようだ。
またイタリア特有のセンスやオシャレな感覚が女性からすると作品に入りやすい原因なのだろう。
確かにダリオアルジェントの代表作を観ていると原色を使い、色で場面の状況やキャラクターの心理を表していることが多い。
視覚的にも美しく楽しめる映画なのだ。
理屈よりも感性、鮮烈な色彩、印象的な音楽、ショッキングな映像…これらダリオアルジェントの個性は特に女性にヒットしやすいホラー作品だといえる。
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ダリオ・アルジェントのドラキュラの感想!
先日ダリオアルジェント監督の映画「ダリオ・アルジェントのドラキュラ」(2012年)を観たとき強烈に感じたこと…
それが「幻想的で妖しく危険な匂いのするホラー映画」という感想だ。
これはダリオ映画全体に対して言える。
「ダリオ・アルジェントのドラキュラ」はブラム・ストーカー原作の「ドラキュラ」をダリオが3Dも駆使して制作した意欲作。
映画の筋を簡単に書くと~
「吸血鬼ドラキュラがヒロインの人妻に恋をして結ばれよう(血を吸おう)とする物語」。
僕はこれまでドラキュラ映画はイギリスの映画制作会社「ハマー・フィルム・プロダクション」のものも含めてたくさん観てきた。
ハマーフィルムといえばフランケンシュタインやドラキュラなどの古典ホラー映画をたくさん生み出してきた制作会社。
ダリオアルジェントのドラキュラは幻想性とエロティックで妖しい雰囲気が強く印象に残っている。
ジャッロというジャンルはヌードなど性描写をひんぱんに使う事でも知られる。
そんなことからダリオアルジェントのドラキュラは官能性やエロスを感じさせながらも古典的なドラキュラの恐怖を描く映画となっている。
ちなみに作中ではダリオアルジェントの娘アーシア・アルジェント(もろヌードシーンアリ!)も出演している。
部分的に3Dも使われており、「ダリオ・アルジェントのドラキュラ」は往年のダリオファンからすると空気感の違う作品に感じられるかもしれない。
僕的には3Dなど使わない方が良いと思ったのだが…
僕はドラキュラ映画ならハマー・フィルム制作、クリストファー・リーが演じるドラキュラ映画が最高だと思う!
「ダリオアルジェントのドラキュラ」ではダリオの個性はやや抑え気味な感がある。
ドラキュラ映画として純粋に楽しめる内容だ。
しかしダリオの殺人ホラー美学を感じさせるスプラッター描写は印象的!
ダリオアルジェントの個性を存分に味わいたいなら他にも名作がある。
しかし「ダリオがドラキュラの世界をどう演出するか?」が観たい人にとっては一見の価値ある作品だ。
「ダリオアルジェントのドラキュラ」はダリオ特有の妖しさ、危険な匂い、幻想性そして映像の美しさが融合したドラキュラ映画である。
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ダリオ・アルジェントのホラー映画の原点はヒッチコック?
ダリオアルジェントの映画のもとをたどると推理サスペンス映画に行きつく。
ダリオの映画にはイギリスの映画監督でありサスペンスの神様ともいわれるアルフレッド・ヒッチコック風の推理サスペンス要素があるのだ。
とくに初期のダリオの映画からヒッチコックの影響が感じられる。
ダリオアルジェントはヒッチコックの名作「裏窓」「見知らぬ乗客」を基にしたオマージュ的テレビ映画「DO YOU LIKE HITCTCOCK?(ドゥユーライクヒッチコック?)」という作品も制作している。
これもすっごく良いですよ!
ヒッチコックの推理サスペンス要素を受け継ぎつつも独自な感覚のホラーを全開に打ち出したのがダリオアルジェントの映画だと僕は感じている。
ホラー映画の魅力は幻想性?
僕はホラー映画最大の魅力は「幻想性」だと思っている!
幽霊でも悪魔でもスプラッターでもゾンビでもラブクラフトでもスティーブン・キングでもダリオアルジェントでも、ホラーには恐怖と共に幻想がある!
「恐怖と幻想」…これが最高に素晴らしいのだ!
幽霊とか悪霊とか殺人鬼というのは実社会ではなかなか遭遇する事ができないし、出会いたくもない。
つまりホラー映画には「非日常」が存在する。
僕たちはホラー映画のなかで恐怖という「非日常」を体験して楽しんでいる。
この「恐怖という非日常」が僕には幻想性と感じられるのだ。
「恐怖という幻想性」を漫画やアートを通して生み出したい!
そしてホラーと幻想性を強烈にマッチさせているのがダリオ・アルジェントなのだ。
ダリオ・アルジェントが監督したポーの「黒猫」
ダリオアルジェントの映画は全て好きだけど、「黒猫」を映画化してくれたことが嬉しかった!
僕はエドガー・アラン・ポーの黒猫が好きでこれまで何度も読んできた。
ダリオアルジェントはそんなポーの「黒猫」を映画化しており、ジョージ・A・ロメロと共作した映画「マスターズ・オブ・ホラー/悪夢の狂宴」(1990年)の中で発表している。
ダリオアルジェントの「黒猫」も傑作である!
ダリオは子供のころ体が弱かったので一人で本を読んで過ごすことが多かったという。
そんな少年のころに出会ったのがエドガー・アラン・ポーの小説だった。
ダリオアルジェントは「マスターズ・オブ・ホラーでポーの原作をロメロと共作したのは、私に霊感を与えてくれたポーへのオマージュだ」と語ったとされている。
エドガー・アラン・ポーってどんな人?という方は、以下の記事に詳細を書きました♪
ダリオ・アルジェントの映画を初めて観るというなら「サスペリア」をおススメする。
サスペリアはダリオアルジェントの個性が集結した代表作であり、「魔女三部作」の第一作目でもある。
幽霊など心霊現象的な恐怖をもとめる人はダリオのホラーは刺さらないかもしれない。
ダリオの作品は鮮烈な色彩や音楽、映像を駆使した感覚とアートのホラーだから。
これまでにない新感覚のホラー映画を生み出したダリオ・アルジェント。
美しく、妖しく、幻想的で鮮烈なアート的ホラー映画が観たい人にとってダリオアルジェントは最適な監督なのだ!
最後にダリオアルジェントが言ったとされる大好きな言葉をのせて頂こう!
「わたしは悪夢を映画にした」~ダリオ・アルジェント
ダリオアルジェントが関わっていた映画「デモンズ2」の感想は以下の記事からどうぞ!
俺もダリアルジェントのホラー映画観ちゃうぞ~!