どうも、漫画アート芸術家の粕川(@artkasukawa)です。
僕は今日幅広く日本美術が展示された美術館へ行き、日本絵画をみてきました。
このように森に囲まれた美術館です。
平安時代から20世紀中盤くらいまでの日本の美術が時代順に並べられており、日本の絵画がどんなものなのかという全体像が把握できました。
なので今日は実際に日本美術を観て感じた日本画の特徴について書いていきたい思います。
2021年10月21日追記
日本美術のネタで描いた漫画がありますので、まずはそちらをご覧くださいませ♪
前後の「もっとがんばれ!バカオくん」は以下リンクに載ってます♪
Contents
日本画とは
日本で生まれた伝統的な絵画をまとめて「日本画」と言います。
日本では絵画を日本画と洋画という呼び方をしますが洋画とは西洋からやってきた油彩や水彩画などを指します。
日本では明治以降に西洋から油彩画などの美術が伝わる中、西洋の絵画と自国の絵画を区別する為に日本画と名乗るようになりました。
日本に西洋美術が入ってくるまで、日本画という概念は存在しなかったのです。
西洋美術が入って来る前の日本絵画は伝統絵画としての狩野派、琳派などの各流派に分かれていました。
明治20年代に入り東京美術学校が設立される頃、美術団体が生まれます。
この美術団体から美術展覧会が開かれるようになると、様々な流派が影響を与え合い、ここに西洋美術の影響も加わわり現在の日本画に発展してきました。
日本画と西洋絵画の違い
日本画と伝統的な西洋絵画には、以下の違いがあります。
●西洋絵画は写実を描く
●日本絵画は情緒を描く
かつてフェロノサという人が日本画の特徴として以下を挙げています。
日本画の特徴~
1:写真のような写実を描かない
2:陰影がない
3:輪郭線が存在する
4:色調が淡い
5:表現がシンプル
上の言葉を見て、確かに美術館で観てきた日本画の特徴に当てはまると思いました。
僕が特に感じた日本画の特徴をピックアップして書いていたいと思います。
日本絵画は写実を追わない
西洋の絵画ではルネサンス頃から写実絵画というものが流行り出しました。
写実とは対象物をそっくり本当に存在するかのように描くことです。
西洋文化には論理、美、調和という概念が存在します。
この要素を絵画に持ち込んだのが西洋美術です。
西洋美術では遠近法を使い遠近の対象の違いを描き分け、絵画の中に現実に対象が存在するように描くことが尊重されました。
レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」はまさに写実を象徴する作品ですね。
一方日本絵画では日本人特有の情緒を心象風景として描きます。
心象風景とは現実に存在する風景ではなく、心の中に存在する風景の事を指します。
情緒を表わす絵画なので、そこに描かれる絵は人の心を癒すような静けさ、広がりがあります。
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日本絵画には空白の芸術がある
日本絵画の特徴には
●空間を素地を使って表現する
●空間を芸術表現として活用する
があります。
日本絵画は、描かれる素材自体を表現として活用します。
例えば日本絵画が描かれる素材に和紙、絹、屏風 などが挙げられます。
これら絵を描く素材にまんべんなく絵を描かず、描かない空間を残します。
あえて何も描かない空間を残し、空いた空間は支持体の素材を残して絵の魅力に変えるという事です。
例えば植物や鳥を描くとして、対象を描いたら背景はそのまま何も描かず素地として残しておきます。
この素地として残しておくことが、絵を描くよりも多くを語るために、何も描かないのです。
西洋美術は日本画と対照的です。
西洋的な写実絵画は画面の全面が絵具で塗り潰されます。
伝統的な西洋絵画ではキャンバス地をそのまま残しておくことはないのです。
西洋絵画の様に画面全体に描かれるという事は、完成された絵という印象を持ちます。
しかし画面全体に描かれている事で想像の余地が入らないという弱点も存在します。
一方日本絵画ではあえて画面に空白を残すことで、描かれていないけど意味深な空間が想像をかき立てます。
日本画では対象を描く時、あえて全てを描かず空白をともなう事で観る側にゆだねる傾向があります。
日本の絵画によく見られる意図された空白は、そこに鑑賞者の想像を生み出すことが出来、これが芸術としての価値を生み出すのです。
画面に何も描かない空間を作ることで、「描かないことで生まれる表現」を見せることができます。
例えば空気、光、幻想、風、香り、音、温度…などなど。
西洋絵画の様に全面を描き切らない事で、鑑賞者それぞれが感じる「絵の無限さ」を感じさせるのです。
僕はこんな日本美術の様式に奥ゆかしさを感じます。
日本美術と西洋美術を比べたとき、日本の絵画には
●地味
●静か
●薄い感じ
という要素を感じます。
例えばルーベンスの「キリスト降下」のような劇的な表現は巨匠・俵屋宗達でも行っていません。
しかし日本美術は派手さがない分、精神性を大切にした奥深い静謐な人間の心を感じさせる表現が見られます。
これがまさに「空白の芸術」にあるのです。
あえて描かないことで、そこに無限を感じさせる空白の芸術表現。
日本絵画では空間をもって絵が完成されるのです。
素晴らしいですね!
言葉では語りつくせない情緒感を大切にした日本絵画と、全てを絵で指定した調和と論理を重んじる西洋絵画。
両者の違いは国民性の違いに繋がっていると僕は思います。
漫画アート芸術家が感じた日本美術の特徴
僕は美術館で日本美術を観ていて感じたいくつかの特徴があるので、それについて書いていきます。
1.枯淡の魅力
日本画の特徴に薄く、淡い感じがあります。
西洋絵画では強い色彩で理想的な美を表現したのに対し、日本絵画ではどこか枯れたような「枯淡の美」を感じるのです。
その証拠に日本画では描かれる色数が西洋絵画に比べて少ない事が挙げられます。
あまり色を使わず、墨の濃淡で奥ゆかしいものを表現する感じ。
狩野派などに代表される金色の背景に描かれた絵にしても、金は目立ちますが他の色自体はそれ程激しく主張していない。
金色の豪華絢爛さを残しつつも日本人の控えめな、奥深い性質が絵にも表れています。
モチーフがさりげない存在感で描かれていたり、空間による言葉に出来ない深い演出が成される日本絵画。
これら日本絵画を見ていて僕は、熟成された日本文化の芸術…つまり枯淡の美を感じたのです!
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2.わびさびの芸術
日本絵画をみるたびに思うのが「わびさび」の芸術性です。
わびさびとは日本独特の美意識のことを指します。
●「わび」とは、「貧相な、不足された状況の中に心の充足を見出す意識」を意味します。
貧しい中にも言葉では言い表せない深い何かを感じ取る感覚と言いましょうか。
●「さび」とは、「静寂の中に奥深い豊かなものを感じられる美しさ」を意味します。
「わびさび」とは、「貧相な中にも深い精神性を感じ取る事の出来る美的感覚」
というような意味に僕は捉えています。
日本絵画は西洋絵画に比べて地味で使われる色数も少なく、主張が乏しい印象があります。
しかし「わびさび」の芸術として考えたとき、「貧しいがゆえの深み」を感じさせるのです!
派手に主張しない故の深みと言いますか。
日本文化は実に奥ゆかしいですね。
この「わびさび」感は西洋の絵画にはあまり見られないので、日本美術の強みであると言えます。
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3.浮世絵のシンプルさを利用したあの有名な画家…
僕は美術館で歌川広重の「東海道五十三次」という浮世絵を観た時、以下の印象を感じました。
「絵がシンプルにまとめられていて、漫画の描線のようだ」と。
かつて西洋の有名な画家が浮世絵に影響されて独特な絵画を生み出しました。
ファン・ゴッホです。
ゴッホは日本芸術の深みやシンプルな線で情緒を表現する所に惹かれて、模写などを行いました。
浮世絵の要素を自分の絵画に取り入れたことで、ゴッホの絵画様式は完成されたと言えます。
僕は美術館で広重の浮世絵を観た時、ゴッホが浮世絵に感銘を受けて独自の絵画様式を確立したという事に納得しました。
似ているのです、広重の浮世絵と黄金時代のファン・ゴッホ絵画が。
●対象を簡略化して、シンプルな線と色彩で表すところ
●風景と人をセットで扱い、さりげなく同居させるところ
ゴッホは浮世絵の作風に自らの個性を付け加えて彼独自の絵画を生み出したということがよく分かりました。
以下の記事では筆者がゴッホの魅力や人生、作品について熱く語りました!
日本絵画の魅力の最後に
僕は美術館にて日本絵画を見て、深い、静寂な美を感じました。
その感動を表わすために椅子に座って大好きな哲学者フリードリヒ・ニーチェのモノマネをしたほどです!笑
日本画は西洋の絵画とは違い「主張しない奥ゆかしさ」を美として扱います。
遠近法を使い、濃淡を駆使した色を使って現実を再現しようとした西洋絵画とは真逆と言えます。
西洋絵画は日本美術の革新性を知って、印象派に繋がりポスト印象派の表現の革命に至りました。
日本人がいかに独特な美的感覚を持っていたかがうかがい知れます。
日本絵画にあるのは日本人の精神性です。
日本的な文化、美的感覚を絵として再現した時、日本美術のような枯淡の芸術に行きつくのです。
僕は日本美術の空間の美に、感銘を受けました!
「あえて描かないことで、描いた以上の何かを表現する!」
ポール・セザンヌはサントヴィクトワール山を描く時、あえてキャンバスに何も描かない空間を残しましたが、何か日本美術を感じさせます。
日本美術が持つ、西洋絵画にはない魅力。
それは静寂の中に感じる奥深い、日本の精神的な表現なのです。