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ゴッホやミレーが描いた種まく人から学ぶ本当の模写とは何か!

投稿日:2016年12月9日 更新日:

ファン・ゴッホは「種まく人」という絵を描いた。

 

こちらがゴッホの描いた種まく人。↓

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この種まく人、僕はゴッホのあらゆる作品の内で最も好きな作品の一つである。

 

ゴッホは人生の中で「種まく人」という主題で何枚も絵を描いている。

種まく人はゴッホにとって自己表現する時に大切なテーマの一つだった。

 

しかしこの種まく人、実はゴッホ以前にも代表作として描いている画家が存在した。

今日は種まく人をもとにして本当の模写の仕方について書いていこう。

 

 

種まく人の初代作者 ジャン・フランソワ・ミレー


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この絵をご存知の方もいるだろう。

描いたのは19世紀フランスで活躍した画家ジャン・フランソワ・ミレー(1810年10月4日~1875年1月20日)である。

 

この人はバルビゾン派と呼ばれるフランスの絵画運動にいた一人。

 

バルビゾン派とはバルビゾン村やその周辺の自然がある場所に画家が滞在して、自然主義的に風景画や農民画を描いた一派のこと。

 

自然主義なので目に見えるものを誇張せずありのままに描いている。

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カミーユ・コローの絵

 

しかし絵の中に現れる情感というか、ロマン、雰囲気に胸を打つ感動があり、僕は大好きな一派。

ミレーの代表作「落穂拾い」

ミレーの代表作「落穂拾い」

 

代表者はミレー、コロー、ドーミエ、テオドール・ルソーなどがいる。

で、種まく人を劇的に描いて西洋絵画史上に残る傑作としたのがミレーである。

 

ミレーはこのような農民や、農村を主題に描いた画家。

 

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一日の仕事が終わり、天の恵みに感謝する農民。

ヨーロッパではキリスト教社会が根付いているから、食事をする時などことあるごとに神への感謝をする習慣があった。

 

そんな敬虔な農民を一切の誇張をせず、真摯に描いた画家ミレー。

 

ミレーの描いた種まく人は、主題の元は新約聖書にある。

 

種まく人とは新約聖書の中でキリストがたとえ話で話したこと。

その一節を載せてみよう。

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ルカによる福音書第8章4節から8節

「大勢の群衆が集まり、方々の町から人々がそばに来たので、イエスはたとえを用いてお話しになった。

『種を蒔く人が種蒔きに出て行った。蒔いている間に、ある種は道端に落ち、人に踏みつけられ、空の鳥が食べてしまった。

ほかの種は石地に落ち、芽は出たが、水気がないので枯れてしまった。

ほかの種は茨の中に落ち、茨も一緒に伸びて、押しかぶさってしまった。

また、ほかの種は良い土地に落ち、生え出て、百倍の実を結んだ。』

イエスはこのように話して、『聞く耳のある者は聞きなさい』と大声で言われた」

 

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ミレーが一枚の絵画で表現した種まく人の元をたどると新約聖書にまでたどり着くのである。

 

 

ゴッホは生涯ミレーを尊敬していた


僕が描いたファン・ゴッホの自画像

僕が描いたファン・ゴッホの自画像

 

19世紀後半を生きたオランダの画家ファン・ゴッホはミレーを尊敬し、師と仰いだ画家である。

 

二人が会ったことはないが、すでに大成していたミレーをゴッホが一方的に崇拝していた。

 

ゴッホが本格的に絵を独学で勉強し始めたのが27歳の頃。

 

その際ゴッホが一番初めにやったことが尊敬するミレーの作品を模写することであった。

 

ゴッホは初めデッサンの練習をたくさんしていた。

その中にミレーの描いた種まく人の模写がある。

 

ゴッホは独創的な絵を感覚でバンバン描いていったように思われがちだが、実はデッサンなど絵画の基本をじっくり時間をかけて習得している。

 

むしろ初期の方はバルビゾン派などの影響が色濃く、薄暗い農民画や風景画などを描いていた。

 

また過去の巨匠や先人達から素直に学び、その良さを主張し、

 

ゴッホの描いた農民画の傑作

ゴッホの描いた農民画の傑作

 

ゴッホはバルビゾン派の画家が描いた、農民、農村といった主題に美しさを感じ、素朴な人間の姿をひたすら描くような所があった。

 

まさにミレーの目指す世界観を模写することからゴッホの絵画のキャリアは始まったのである。

 

後年アルルにて自分のスタイルを確立してからもゴッホはことあるごとに尊敬するミレーの絵を描いていた。

 

そう、種まく人もその中の一つなのだ。

 

 

ゴッホの描いた「種まく人」


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僕がゴッホの作品の中でもトップクラスに好きなこの種まく人はゴッホが尊敬するミレーの絵を模写したものである。

 

もう一点別バージョンの種まく人がある↓

 

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ちなみにこちらは2016年開催の「ゴッホとゴーギャン展」で展示されていた。

 

なぜ僕がこれら種まく人が好きかというと理由がある。

 

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僕はこの絵を見たときものすごく懐かしい感じがした。

 

僕が18歳で芸術と運命的な出会いを果たしてゴッホという名前を聞いた時、その響きにものすごく懐かしい感じを受けた。

 

何か前世でも関わりがあったかのような、時をこえて出会ったかのような感覚。

 

僕の父が本や骨董が大好きで、幼い頃から美術全集や様々な本が身近にあった。

なので幼い頃にゴッホの画集で種まく人を見ていたのかもしれないが、とにかくこの絵に強烈な懐かしさがあった。

 

・対象を明確に線で縁取る描き方

・揺らぐような、執拗に繰り返される短い線のタッチ

 

一見マンガのようにも見えてしまう独特なゴッホのタッチ。

 

僕は様々な画家やマンガ家などを調べ、自分が大好きな作家の要素を吸収昇華して自分の絵に組み合わせてきた。

 

僕の絵は何となくで描いているのではなく、大好きな作家を研究し良い部分を取り入れていくことで形作っている。

 

今回ご紹介した種まく人も、ゴッホの種まく人に感銘を受けて描いたもの。

 

 

僕はこれからも種まく人をテーマにして絵を描こうと思っている。

近いうちに種まく人の連作でも始めようかな~

 

 

ゴッホの独特な模写の仕方


ゴッホの種まく人

ゴッホの種まく人

 

ゴッホがこの種まく人を描いたのは1889年サンレミの精神病院にいた頃である。

度重なる発作に恐れおののきながらも病室や野外で制作を許されていたゴッホ。

 

彼はこの時弟にミレーの素描集を送ってもらった。

白黒の線描で描かれたミレーの作品集。

ゴッホはこれをもとに模写をする。

 

しかし彼の模写は一風変わっている。

 

模写と言ってもそのまま対象を映すのではない。

ミレーの作品をもとにしながらも、あくまで自分の表現言語で翻訳する、という模写の仕方なのである。

 

白黒のミレー作品を、油絵でゴッホというフィルターを通して模写する。

 

ゴッホ自身こういう内容のことを言っている。

自分は単に模写をしているのではなく他者の作品を翻訳し、自分の解釈で再構成している。

 

ゴッホは自分のやる行為が模写ではなく、楽団を指揮してクラシック音楽を再構成する指揮者であると言っている。

 

モーツァルトの書いた曲でも指揮者によって雰囲気はだいぶ変わる。

ブルーノ・ワルターとヴィルヘルム・フルトヴェングラーの指揮では、着地する音楽が全然別のものになる。

 

 

このようにゴッホはミレーという作曲者の作品を独自の解釈で色付けし、表現した。

 

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このゴッホが行う行為は重要なことを僕たちに教えてくれる。

「他者の作品をきっかけにして、自分独自の解釈で作品を作ることにより自己表現力を上げる練習になる」

ということ。

 

ゴッホはミレーを模範としながらも、オリジナルな世界を作っている。

ミレーの種まく人

ミレーの種まく人

ゴッホの種まく人

ゴッホの種まく人

 

ミレーとゴッホ、明らかに作風は違う。

 

しかしテーマという出発点は同じである。

 

そしてこの違いを生み出すものが個性である。

 

他者の作品を出発点としながら自分の個性で翻訳するとどうなるのか?

あるテーマを自分の個性によって作り変える自己表現能力が鍛えられるのである。

 

ファン・ゴッホはこれを行っていた。

だから強烈な表現力を持っているのだろう。

 

 

まとめ


 

 

 

ゴッホの描いた種まく人は、ゴッホが大好きなミレーの模写から始まった。

 

そして種まく人とは新約聖書で登場するキリストのたとえ話であり、これを発端として描いたのがミレーの種まく人であった。

 

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テーマは世代を超えて受け継がれる。

 

そして模写とは単に対象を映すだけではない。

対象をキッカケとしながらも、あくまで自分の表現言語で翻訳し表現する。

 

これを行うことで自己表現能力が高められることをゴッホから学んだ。

 

種まく人が何の種をまいているのかは分からない。

しかし確かなのはあなた自身の強烈な表現欲求をまくことでオリジナルな作品は生まれる。

 

種まく人は世代を超えて大切なことを僕たちに伝えてくれているのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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粕川裕康/漫画アート芸術家。漫画描きと油絵描きをしており、二つ合わせて漫画アート芸術家!/漫画とアートを組み合わせた創作活動をしています。

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