漫画のストーリーを作ろうと思った時、まず何から始めたらいいのだろう?
漫画の物語を作ると言っても、漠然としすぎて何から始めたらいいか分からない
そんな方へ向けて現役漫画描きの筆者が漫画のストーリーの作り方、コツ、考え方について書いていこう。
ここに書くストーリーの作り方は、読み切り漫画を描く時や一話完結漫画を描くときに特に使えるぞ!
2021年10月4日追記
漫画のストーリーの作り方に関するマンガアートを作ったので、まずはそちらをどうぞ!
前後のエッセイ漫画は以下リンクに載ってます!
Contents
1【漫画ストーリーの作り方】テーマを決める
漫画ストーリーの作り方でまず大切なのは「テーマ」を決めること。
テーマとは、漫画の中で何を一番見せたいのか?ということ。
漫画のストーリー作りは、テーマを決めることから始まる。
例えば32ページの読みきり漫画を描くとして「冒険家の主人公が人のいない古代遺跡に探検に行き、恐ろしい体験をする」という話は漫画のテーマになる。
漫画のテーマに何を選ぶかは、作家の個性である。
テーマというのは人の数だけ存在するので、あなたが心底描きたいもの、伝えたいことを選ぶようにしよう。
中にはテーマを決めず、シチューエーション(状況)だけで漫画を描く人もいる。
描きたい状況をひたすら羅列するような漫画の作り方だ。
シチュエーション同士にストーリーの繋がりがあり、物語にテーマの筋が通っている場合はこの作り方でもうまくいく。
でもシチュエーション同士がバラバラでテーマが統一されていない場合、よくわからない漫画になる可能性が高い。
「こんなシーン描きたいな」というシチュエーションだけを集めるのではなく、漫画のメインテーマを決めて、筋の通ったストーリーを作ることが大切だ。
2【漫画ストーリーの作り方】シチュエーションやエピソードを出す
漫画のテーマを決めたら、次にテーマと関連したシチュエーションやエピソードのアイデアを出していこう。
●シチュエーション⇒物語を展開していくために必要な状況
●エピソード⇒物語を構成している短い話
紙を用意して、頭のなかにあるストーリーのアイデアを箇条書きしよう
ここで大切なことは、漫画のテーマと関連したシチュエーションやエピソードをとことん出すこと!
例えば32ページの漫画を描こうとしてるなら、物語内で描かれるであろうあらゆる状況、絵、セリフ、エピソードのアイデアを出すのだ。
漫画のシチュエーションを出すときは、描きたい状況を絵でメモしておくと良い。
主人公とヒロインの出会いのシーンとか、印象的なバトルシーン、最後の決め台詞など漫画の決めシーンは、絵とセットで考えておこう。
漫画の物語は、最終的にコマ割りされて漫画として見てもらう事になる。
シチュエーションやエピソードを文字だけで書くのではなく、絵としてイメージできるようにしておくと、ネームを描くときに参考になる。
アイデアは、できるだけ絵とセットでメモしておくのだ。
物語は、ストーリーを構成する小さなシーン(エピソード)の集まりから出来ている。
だから物語の要となるエピソードから考えていこう。
例えば主人公の生い立ち、脇役との関係性、敵キャラとの遭遇、なぜ敵と戦うのか?など物語を構成するために必要なエピソードをあらゆる角度から書き出す。
漫画ストーリーのエピソードは、どんな状況で登場するのかも面白さにつながる。
エピソードが思いついたら、そのエピソードが魅力的にみえる状況(シチュエーション)を考えよう。
例えば主人公が意中の女性と仲良くなるために、たこ焼き屋へデートにいくエピソードを考えたとしよう。
たこ焼き屋では、幻のたこが入ったたこ焼きを当てるクイズイベントがやっているシチュエーションだ。
たこ焼きが好きな女性は、主人公に幻のたこ焼きクイズに挑戦して勝利してもらい、プレゼントでもらえる幻のたこ焼きセットが食べたいと言ってくる。
しかたなく幻のたこ焼きを当てるクイズイベントに参加する主人公…というストーリー展開が考えられる。
思いついたエピソードが活かされるような状況を考えることで、漫画ネームのアイデアも浮かびやすくなるだろう。
エピソードを魅力的に見せるために必要なシチュエーション(状況)を、絵や文字で書き出そう。
こんなシチュエーション、エピソードは使えないと思っても、とりあえず描いておくと後で役に立つこともある。
こんなに一杯ネタを出したら、既定のページ数におさまらないと思うかもしれない。
大丈夫、次のステップでテーマに関連したネタを整理していくのだ。
漠然としたアイデアを整理するときは、以下の記事に書いてある構想の段階を踏むとうまくいくかもしれないぞ。
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3【漫画ストーリーの作り方】テーマに関連したエピソード以外を捨てる
漫画のシチュエーションやエピソードをたくさん出したら、次にアイデアの引き算を行っていく。
考え出したエピソードを、削るのだ。
この時大切なことが「テーマに深く関連したエピソードのみを残す」こと。
漫画のテーマと関連性の薄いものは、思いきって捨ててしまおう。
テーマに関係のないものは、描く必要がないのだ。
漫画は描けるページ数が限られている。
「一番見せたいことを全面に押し出すこと」で、読者に伝わりやすい漫画になる。
すべてのシチュエーションやエピソードは、漫画のテーマと繋がっている必要がある。
漫画のテーマとエピソードをつなげることで、一貫性のある作品になり、それが読者に訴えるきっかけになるだろう。
またテーマは、一つの作品の中でくりかえし見せることで印象深いものになる。
ベートーベンの交響曲第五番「運命」の第一楽章が「ダダダダーン」の旋律で全編構成されているように、漫画のエピソードはテーマという主旋律を軸に作られる。
シチュエーション、導入部、ヤマ場、クライマックス、ラストの全てにおいて「一番見せたいものに関連させる」ことが大切。
テーマと繋がらないシチュエーションやエピソードは必要ないのだ。
例えば月世界を舞台にしたSF戦争物語を描くなら、敵と味方が月で戦争をせざるを得なくなる物語の要素だけを残す。
女性同士のけんかと仲直りを通して友情を描くなら~
1:まずは女性同士が仲が良い物語の展開を描く
2:ちょっとしたことが原因で、女性同士がけんかする対立関係を描く
3:女性同士が一緒に協力しないと、仲間がピンチになる状況を作る
4:女性同士はしかたなく協力するけど、気持ちとしては反発しあっている
5:女性同士は仲間を救うために助け合い、最終的に仲間を救うことができた
6:女性同士は仲間を救う過程で、仲直りをすることができた
上に挙げた要素は、女性同士が仲間を救う過程を通して、対立状況から仲直りに至る流れのストーリーを書いている。
「けんかと仲直りを通して友情を描く」テーマにそってエピソードを選ぶから、読者に伝わりやすくなるのだ。
ここにテーマと関連性のない要素を入れると、伝えたいことが不明瞭になる可能性がある。
長編漫画ならテーマを複合して描くのもありだけど、読み切り漫画の場合1つのテーマに関連したエピソードだけを残すようにしたほうが良いだろう。
この基準で、容赦なく出したアイデアを捨てていく。
先にシチュエーションやエピソードを出せるだけ出す理由は、アイデアの引き算を行うので、アイデア自体が少ないと物語にならないからだ。
●アイデアは出せば出すほど質の良いものが生まれる可能性が高まる
●あらかじめ広く物語素材を考えることで、ストーリーの選択肢も広がる
●何気なく思いついたアイデアが、物語のスパイスになるかもしれない
これらの理由から第2ステップで、アイデアをたくさん出す必要があるのだ。
以下の記事には漫画のストーリー作りのときにも使える、アイデアを出すときに必要な考え方などが書いてあります♪
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4【漫画ストーリーの作り方】キャラクターの変化を描く
物語の基本として、キャラクターの変化を描くことを意識しよう。
物語は、主人公を軸に進んでいく。
そして主人公は何らかの問題に直面し、葛藤する。
試行錯誤のすえに問題を克服した主人公は、何らかの変化を体験する。
「問題⇒葛藤⇒変化」
これが物語を構成する基本的な考え方である。
物語の中で変化する存在が、主人公なのだ。
主人公に何も起こらなかったら、退屈で読者は物語に引き込まれないだろう。
主人公に問題を作るコツは「主人公の叶えたい夢、目的」を作ること。
例えば主人公がボクシングの世界チャンピオンになる夢に挑戦する物語があるとしよう。
現状と希望のあいだにある実力のギャップを、練習で埋める一つ一つの壁が「問題」となる。
初めは乗り越えるのが難しかった壁(葛藤)も、努力や仲間の助けなどによってやがて乗り越え、主人公の目的が実現される(変化)。
この主人公が変化する過程を描くのが、物語なのだ。
1:主人公に立ちはだかる問題を考える(主人公の目的を明確にする)
⇒2:問題に立ち向かう中での、葛藤や試行錯誤を描く
⇒3:主人公の目的が達成される
この3点セットが物語を構成する要素なら、物語を作るのは簡単なことに思えないだろうか?
3つの部分に何を当てはめるかは、作家の個性や発信するメディアの目的によって変わる。
しかしアイデアの数だけ物語は作れる!
物語作りを考える時は、常にこの公式を思い出そう。
「問題⇒葛藤⇒変化」!
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5【漫画ストーリーの作り方】物語のテンプレートを使う
漫画の物語を作るとき、テンプレート(テンプレ)を知っていると役に立つ。
物語には、特定のパターンが存在するのだ。
例えば「ボーイミーツガール」であれば男子と女子が出会い、すったもんだの末に結ばれたり別れたりする。
「お姫様救出物語」なら、さらわれたお姫様を助けるために仲間をつれて冒険の旅に出る主人公を描き、敵をやっつけて姫を救う。
19世紀イギリスの小説家チャールズ・ディケンズは、物語の全てのパターンはシェイクスピアによって書きつくされたという類の言葉を残している。
世の中にはたくさんの物語があるけど、細かくバラすと全ての物語はシンプルなパターンに行き着く。
「物語のパターンをいかに自分の個性で再構築するか?」がカギなのだ。
物語のパターンに、何をのせるかで漫画の個性が出る。
例えば僕の好きなストーリーに「移動中にとつぜん足止めをくらった主人公が奇妙な空間に誘い出されて恐ろしい体験をする」というパターンがある。
主人公がある場所へ行くために移動中、不可解な現象が起こって車が動かなくなる。
仕方なく車から降りて近くにあった村に助けを求めると、そこは恐ろしい場所だったという物語パターン。
これはホラー映画でよく使われる物語のテンプレだ。
「変態村」や「蝋人形の館」、トビー・フーパ―監督の「悪魔のいけにえ」、ハーシェル・ゴードン・ルイス監督の「2000人の狂人」、スチュアート・ゴードン監督の「ドールズ」などが、この物語パターンの名作!
ホラー好きは、絶対に観ておきましょう!
上にあげた作品は、全て一つの物語パターンから生まれている。
しかしどの作品もオリジナルで面白い。
つまり物語パターンが同じでも、表現の切り口を変えればオリジナル作品になるということ!
原型となる物語パターンに、オリジナルの発想で色付けすることで新しい物語が生まれる。
では物語パターンにどうやってオリジナルな色付けを行うのか?について、以下から見ていこう。
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6【漫画ストーリーの作り方】たまらなく好きな要素を盛り込む
既存の物語パターンに、もしくは自分で考えた物語につけ加えるべき大切な要素が「たまらなく好きなこと」を描くことだ。
「自分が一番見せたいもの」「たまらなく好き!」ってことを、漫画の物語に盛りこんでみよう!
あなたがたまらなく好きな事はなんだろうか?
巨乳?イケメン?はらまき?
例えばはらまきフェチなあなたが、女の子が主人公の恋愛物語を描くとする。
ヒロインはなぜ意中の男子に惚れたのか?
体育の時間で着替えるとき、何気なく見た好きな男の子がはらまきをしていた。
はらまきをしている男の子に、あらためて一目ぼれしたヒロイン!
外見はクールなのに実は腹巻きをして体温調節することの大切さを知っている彼。
私もあの腹巻きで巻かれてみた~い(笑)(ヒロインの妄想)
…こういう感じで、たまらなく好きなものを物語に組み合わせていく。
物語パターンを使う時にエピソードまで同じものを使ったら、お決まりの話しにしかならない。
しかしあなたのたまらなく好きな要素を使うことで、オリジナルな漫画に変わるのだ。
「たまらなく好き」を加えるのは、物語だけでなく絵も同じ。
例えば男性の筋肉を描くのがフェチなら、筋肉ムキムキのキャラクターがたくさん登場する漫画を描いてみる。
筋肉ムキムキキャラをたくさん描くので、筋肉を描くことも上達する。
またこの漫画は、物語の要所で筋肉が絡んでくるだろう。
「これを描いてると最高に楽しいのじゃー!」というあなたにとってたまらないものをとことん描くのだ!
好きなことがマニアックすぎて理解してもらえるかどうか分からない…
そんな時も、周りなど気にせず容赦なく好きな世界を描いてみよう!
好きな対象がマニアックなほど、そこに共感する人には深く刺さるからだ。
もしもたまらなく好きなものが見つからない場合は、どうしたらいいのか?
本を読み漫画を読み、映画やアニメをたくさん観よう。
人と会ったり遊びに行ったり、色んな新しいこと、面白いことに触れてみよう。
対象は何でもよいので、自分を刺激する何かに触れ続けることで、表現したい何かは生まれてくる。
これらの体験から得た学びを、漫画創作に活かすのだ。
とにかくあなたがたまらなく好きなものを、物語にも絵にも叩きつけていくようにしよう!
ちなみに僕がものすごく好きで描きたい対象は…「恐怖」…である。
漫画ストーリーの作り方のまとめ
漫画のストーリーの作り方、コツや考え方について書いてきた。
漫画物語を作る時は~
1:漫画のテーマを決める
2:シチュエーションやエピソードを出しまくる
3:テーマに関連したエピソード以外を捨てる
4:キャラクターの変化を描く
5:物語のテンプレートを使う
6:たまらなく好きな要素を盛り込む
などを考えながら漫画のストーリーを創作しよう。
この中で作者の個性を発揮すべき最重要点は「漫画のテーマ」だ。
何をテーマにするかで、その後の漫画制作が変わる。
どんなテーマで描くかが、作者の個性なのだ。
是非とも自分にしか描けない心から訴えたいこと、表現したいことをテーマに漫画のストーリーを作り出していこう!
漫画のストーリーの作り方で考えたアイデアは、プロットにまとめてメモしておくと、漫画制作で役立ちます
漫画のストーリーを考えたら、それをネームで描いてみようね
最後までお読みくださりありがとうございました