僕は「帰ってきたウルトラマン」でトップラスに好きなエピソードがある。
それは第31話「悪魔と天使の間に」。
これは「帰ってきたウルトラマン」で初めて宇宙人(ゼラン星人)が出る作品で物語的にも最高に面白い。
そんなこともあり、僕は最近夕食を食べる時この「悪魔と天使の間に」をDVDで鑑賞しながら「面白さ」について研究している。
何度見ても思うけど、物語構成やキャラクターの生かし方、ウルトラマンの戦闘シーン、そして感動的なラストシーンにとても感動する!
帰ってきたウルトラマン第31話「悪魔と天使の間に」は、面白い漫画を作りたい人にとって研究するに値する傑作である!
僕は本日、この「悪魔と天使の間に」の何が面白いのかを徹底究明していくので、面白い漫画を描きたいと思っている人は目を通しておいて欲しい。
Contents
帰ってきたウルトラマン「11月の傑作」とは?
帰ってきたウルトラマンは1971年4月2日~1972円3月31日にかけて毎週金曜日のゴールデンタイム(19:00~19:30)に放映されていた。
帰ってきたウルトラマンのシリーズには「11月の傑作」と呼ばれる4本のエピソードが存在する。
なぜ「11月の傑作」と呼ばれるかと言うと、この時期に放映された4エピソードの内容が非常に充実していて「帰ってきたウルトラマン」の中でも飛びぬけた傑作と評価されているからだ。
そんな「11月の傑作」の冒頭を飾ったのが本日ご紹介する「悪魔と天使の間に」。
帰ってきたウルトラマンに限らず、名作と呼ばれる映画やドラマではバックで流れる音楽の魅力が非常に高いという共通点がある。
やはり「帰ってきたウルトラマン」で流れる音楽も素晴らしくて、適材適所で使われるから作品の魅力が増している。
「帰ってきたウルトラマン」を見る時は、バックで流れる音楽にも注意を向けてほしい!
「悪魔と天使の間に」の面白さ
「悪魔と天使の間に」は傑作だ!
ではなぜ傑作と言えるのか?
「悪魔と天使の間に」の一番の見どころは「障害を持つ子供に扮した宇宙人が隊長の娘を利用してウルトラマンを殺そうとする」というプロットにある。
少年はしゃべることが出来ない障害を持っている。
これを念頭に置いて「悪魔と天使の間に」の物語を解説していこう。
主人公の郷秀樹は地球を怪獣から守る活動をしているMAT隊員の一人。
ある時MAT本部に隊長の娘(美奈子)とその友達(テルオ)がやってくる。
二人はある教会で出会ったようだ。
少年はしゃべる事の出来ない障害を持っており、隊長の娘はそんな少年の面倒を見てあげる心優しい女の子。
隊長の娘、少年、郷秀樹の三人でMAT基地を見学していると突然少年が郷秀樹にテレパシーで話しかけてくる。
テルオ少年は宇宙人であり、郷秀樹(ウルトラマン)を殺すために障害者の少年の姿を借りて、隊長の娘をだましてここまで来たのだとテレパシーで伝える。
地球を侵略しようとしているゼラン星人が少年の正体だったのだ。
「郷秀樹がウルトラマンに変身し、おとり怪獣プルーマに勝った時がウルトラマンの最後だ」と少年(ゼラン星人)は宣言する。
作品の冒頭でミステリーを投げかけろ
まず「面白いポイント1」がここ。
視聴者に向けて「ミステリー」を投げかけている。
ミステリーとは、「謎」のこと。
なぜウルトラマンに変身して怪獣に勝った時がウルトラマンの最後なのか?
この謎が気になった視聴者は必ず作品を最後まで見るだろう。
なぜなら「どうして?」という謎を解消したいからだ。
作品の冒頭にミステリーを設定することで、謎の答えを知りたい読者は作品を最後まで読もうとする意欲を持ってくれるということだ。
郷秀樹が発狂したと見せかける脚本の上手さ!
少年が宇宙人だと知った郷秀樹は、少年に襲い掛かる。
当然だろう、相手は地球侵略をたくらむ宇宙人であり、怪獣を使って人間を殺そうとしているからだ。
しかし少年につかみかかった郷秀樹は第三者から見てどう映るだろうか?
「口のきけない子供の首を絞める郷秀樹」と映る。
おかしくなったと勘違いされた郷秀樹は周りの人に押さえられる。
テーマを含ませつつも面白い展開
ここが面白いポイント2。
僕はこの展開を書いた脚本家・市川森一氏のセンスの良さに感動した。
宇宙人が障害者の子供に化けることで「差別問題」というテーマを潜ませている。
「郷秀樹は人類のために宇宙人を殺そうとしているのに、周りからは頭がおかしくなったと誤解される」展開は、最高に面白いと思う!
「テーマをほのめかしつつ、テーマを絡めて物語を面白く展開させる」
この二つを同時に表現しているのだ。
漫画を描く人はこのような手法を学ぶことで創作力アップに繋がる。
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少年がゼラン星人だと隊長にも信じてもらえない
隊長と二人きりになった郷秀樹は事情を話すが、信じてもらえない。
ウルトラマンであることは周囲に内緒だから本当のことが言えないのだ。
郷「お嬢さんが連れてこられた少年は人間の姿を借りた宇宙人です。奴の目的はウルトラマンを抹殺する事です」
隊長「彼が自分の口で言ったのか?あの少年は口がきけないんだぞ」
郷「ですから…テレパシーで話したんです…」
隊長「ウルトラマンの事をどうして君だけに?テレパシーの事なら私も知っている。宇宙人が人間そっくりの姿で紛れ込むこともな。しかしあの少年は違う。はっきり言って君の妄想だ」
郷「初めから信じてもらえないと思っていました。しかしこれだけは聞き入れて下さい。お嬢さんおをあの少年に近づけておくことは危険です!」
隊長「美奈子は心の優しい娘なんだ。親として娘の善意を踏みにじることは出来ない」
郷「しかしお嬢さんが危険な現実にさらされているとしたら!」
隊長「何事にも汚されない美しい友情。それが子供たちの現実だよ」
隊長に理解してもらえない郷は一人で戦うことを決意する。
「帰ってきたウルトラマン」史上名シーンの一つだ。
主人公郷秀樹の苦悩と一人で戦う決意が描かれている。
郷秀樹の苦悩とは「宇宙人の地球侵略を阻止しようとしているのに、信じてもらえないこと」
さあ、この後郷秀樹はどうなってしまうのか?
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おとり怪獣プルーマ登場!
隊長と郷秀樹のやり取りの後、K地区の小学校の下から怪獣プルーマが出現する。
「郷秀樹がウルトラマンに変身し、おとり怪獣プルーマに勝った時がウルトラマンの最後だ」
郷は少年の言ったことが気になってウルトラマンに変身出来ない。
その時バルーンにつかまったテルオ少年が怪獣に人質に取られてMATは攻撃が出来なくなる。
怪獣は少年を話して地下に逃げ込む。
後日病院に入院しているテルオ少年のもとへお見舞いに行く郷秀樹は少年からテレパシーでこんな風に脅される。
少年「どうした郷。ウルトラマンになるのが怖くなったのか?明日はこの病院の鼻先に出してやるぞ(怪獣を)。病人を助けたいならウルトラマンになることだな」
郷「ウルトラマンになる前に貴様を殺してやる!」
逆上した郷秀樹は少年に襲いかかる。
しかし隊長の娘や看護婦、隊長にまで現場を目撃されてついに精神を疑われてしまう。
隊長「子供の首なんか絞めてどうするつもりなんだ?」
郷「子供ではありません、あいつは宇宙人です」
隊長「宇宙人であることを強引に白状させようとしたのか?」
郷「白状させるつもりなんかありません、殺すつもりでした」
この葛藤を観てほしい!!
「少年に化けた地球侵略をたくらむ宇宙人を倒したい郷秀樹」と「障害者に対する偏見と勘違いしている第三者が郷秀樹を邪魔する」。
「悪魔と天使の間に」は見事な「葛藤」が存在し、これが作品を面白くさせている。
「葛藤」がどう「解決」されていくか?
「葛藤」を抱えた郷秀樹はこのエピソード中で最も感動的なセリフを言う。
物語を見る時はこの過程をよく見るようにしよう。
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郷秀樹が打ち明ける感動的なシーン!
物語は「問題」「葛藤」「解決」のワンセットで成り立っている。
「葛藤」を抱えた郷秀樹はこのエピソード中で最も感動的なセリフを言う。郷秀樹が打ち明ける感動的なシーン!
MAT基地で隊員の皆がいる中、郷秀樹は隊長に娘さんはどこかと尋ねる。
隊長は郷を精神病院に入れることさえ考えている。
ここから「悪魔と天使の間に」でとても感動的なシーンが始まる!
郷「お嬢さんはどこですか?」
隊長「病院へ残してきたよ、どこへ行く?」
郷「お嬢さんを連れ戻します」
隊長「余計な事をしないでくれ、美奈子は私の娘だ」
郷「だったら私を信じて下さい。お嬢さんは利用されているんです」
隊長「私はあの子(娘)を何かの偏見で他人をだましたり疑ったり差別したりするような人間には育てたくないんだ!」
考え込む郷秀樹…
郷「明日あの病院の近くに怪獣が出てくるはずです。あの少年がテレパシーでそう宣言しました。予言通りに怪獣が現れたら信じてくれますか?」
隊長「私はあの少年よりも君の方がむしろ宇宙人じゃないかという気になっているよ」
郷「あの宇宙人はウルトラマンを抹殺するのが目的です。ウルトラマンがピンチに陥ったらあの少年を捕まえて下さい」
一人MAT基地を立ち去る郷。
このシーンの間バックで流れている曲がシーンを感動的に盛り上げている!
僕は数ある「帰ってきたウルトラマン」の中でもここが指折りの名シーンだと思っている。
「真実を知る郷秀樹が精神を疑われつつも、隊長の娘や人々を救うために最後のメッセージを残す」姿が胸に迫るのだ。
シーンに緊張感があり、これから戦いに出向く郷の決意がとてもカッコいい。
予言通り病院の近くに出現する怪獣
郷の予言通り翌日、病院の近くに怪獣が現れた。
病院ではテルオ少年が行方不明になっている。
郷「やはりウルトラマンに変身するしか防ぎようがないのか。あいつはウルトラマンが怪獣に勝った時が最後だと言っている。ようし、こうなったら一か八かだ!」
ついにウルトラマンに変身して怪獣と戦う郷秀樹。
見事ウルトラブレスレット(腕についてるブレスレットで飛び道具として使った)で怪獣の首を切り落とす!
しかしその瞬間ウルトラブレスレットのコントロールが効かなくなりウルトラマンを襲いだした!
ウルトラマンは自らの武器で苦しめられ、ピンチに陥る。
そんな状況を見ていた隊長は郷の言っていた言葉を思い出す。
「ウルトラマンがピンチに陥ったらあの少年を捕まえて下さい」
郷の言っていた言葉が脳裏をよぎる。
隊長は病院の中へ少年を探しに行く。
少年はどこにもいないと娘が言う。
先に娘を非難させて一人テルオ少年を探す隊長。
すると霊安室の方から怪しい音が聞こえてくる。
隊長は誰もいないはずの霊安室に入っていく。
祭壇の後ろに何かの気配がある。
隊長がのぞくとそこにはテルオ少年が機械をいじっていた!
少年は怪獣やウルトラブレスレットを操っていたのだ。
隊長に発見されたことに気づいた少年は怪光線を発射する。
隊長はとっさによけて銃で少年の首を撃つ。
少年は血を流しながらよろよろと隊長のもとへ近づいてくる。
ついに力尽きて倒れた少年を見ると、そこにいたのは血まみれの宇宙人だった!
このシーンはとてもホラーチックで、怖さを感じる。
子供向けの番組でこんな演出が出来た所に昭和の時代性を感じる程だ。
宇宙人の少年が死ぬとブレスレットは元に戻り、ウルトラマンは空へと帰ってゆく。
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感動的なラストシーン
僕は「天使と悪魔の間に」を観るたびに毎回涙が出そうなほど感動する場面がある。
それがラストシーンである。
教会の鐘が鳴り響いている。
これは子供(隊長の娘さん)を象徴するような清らかさを表現していて胸を打つ。
教会に美奈子(隊長の娘)を迎えに行く郷と隊長。
郷「僕ならあの少年は遠い外国へ行ったと言いますね」
隊長「君がそう言ってくれることはありがたいが、やはり事実を話すつもりだ。人間の子は人間さ。天使を夢見させてはいかんよ」
このセリフがとても良い!
そして隊長の発言は価値観が一変していることが分かるだろうか?
ドラマはキャラクターの変化を描くもの
ここが「面白いポイント3」となる。
物語の冒頭で「何事にも汚されない美しい友情、それが子供達の現実だよ」と隊長は言った。
しかしラストで隊長は「天使を夢見させてはいかんよ」と逆の価値観に変わっている。
なぜかと言えば物語の中で現実(宇宙人が障害者の子供に化けてだましていた)を知ってしまったから。
ドラマを作る際に、「キャラクターの心情の変化」というのは非常に大切だ。
傑作と言われる物語を注意深く観てほしい。
作品の初めと最後で、キャラクターの価値観が変化していることに気づくはず。
この心情の変化を描くことこそ、ドラマなのだ。
優れた物語は心情の変化を説得力を持って描いている。
心情でなくとも、何かしら状況に変化が起こるというのがドラマの条件だと言える。
だから隊長の心情にも変化が生まれたのである。
僕が観るたびに感動する場面はここなのだ!
バックで美しい音楽が流れる中、隊長と郷のやり取りの後カメラは父のもとへ手を振りながら走ってくる美奈子を映す。
晴れやかに笑う美奈子をじっくりとアップで捉えながら清らかな音楽と共に幕を閉じる。
このシーンの持つ感動が分かる人のセンスは素晴らしい!!
子供のように純粋無垢な心を持っているということだから。
バックで流れる音楽がとにかく魅力的で子供の純粋な感覚を美しく表している。
僕はこのシーンを観るたびに胸からこみあげてくる感動を覚えるのだ!
そしてこの感動を形にしたい強烈な欲求に駆られる。
漫画アートという形で。
僕に漫画アートを描かせる衝動は「感動」である。
これまで見てきた様々な傑作や人生体験から得た感動が、無限の創造意欲を呼び起こしているのだ。
帰ってきたウルトラマンの「悪魔と天使の間に」は紛れもない傑作。
このエピソードの中には「面白さ」の源が詰まっている。
あなたが面白い漫画を描きたいと思っているなら、「悪魔と天使の間に」をよく研究することで「面白さ」の片鱗を掴むことが出来るだろう。
映像作品は文字で書くより実際に見るのがモノを言うので興味のある方は是非ご視聴してみることをおススメする。
僕はウルトラマンや仮面ライダー、その他様々なアニメや映画を観てきた。
そしてここから感じた揺るぎない感動が僕の創作の原動力となっている。
そして帰ってきたウルトラマン「悪魔と天使の間に」は本当に素晴らしいエピソードである!
ウルトラマンエースを観て人生が激変した筆者が、ウルトラマンエース最大の魅力を語った記事は以下からどうぞ!