「色彩はそれ自体で何かを表現する」。
19世紀オランダ出身の画家フィンセント・ファン・ゴッホが言った言葉だ。
色彩は、それを置くだけでなにものかを語れるのだ。
実際にゴッホの絵画は、原色の対比などの効果で画家自身が感じたことを表現している。
ぼくは上のゴッホの言葉を始めて読んだとき、とても感銘を受けた。
そして僕自身も、色彩で自分自身を表現しようと思ったのだ。
もしあなたも色彩を使って何かを表現したいなら、色が持つ力に注目した方がよいだろう。
この記事では色彩がそれ自体で何かを表現することについて、筆者の絵を交えながら解説していこう。
色とは何か?
色彩とは何か?
色彩は、光の波長を脳が認識したときに感じられる現象である。
物それ自体に、色がついているわけではない。
人間が何かを見るためには、光と眼が必要だ。
太陽や蛍光灯などの光源からは、光が放出されている。
光がモノにぶつかると、反射する。
光がモノにぶつかったとき、一部の光はモノに吸収されて、残った波長の光だけが反射するのだ。
太陽光は無色透明だけど、実はたくさんの光が混ざっている。
人間の目で認知できる色の範囲は、虹の7色まで。
でも太陽の光には、7色以外の色も含まれている。
なぜリンゴは、赤く見えるのだろうか?
太陽から届いた無色透明な光はリンゴに当たると、一部の光はリンゴの皮に吸収される。
太陽光はリンゴの皮に吸収されるけど、吸収されなかった波長の光だけが反射する。
リンゴの皮は太陽光の波長のうち、赤い波長だけを反射しているのだ。
赤い反射光が人間の目に入り、網膜から脳に知覚されると、赤い色として認識される。
リンゴの皮は、人間の見える波長領域のうちで、赤以外の全ての光を吸収していたんだな。
残った光が目に届いて、赤と感じられたのか。
空はなぜ青く見えるのか?
太陽光が大気圏内にはいると、空気中にある微粒子に反射する。
微粒子に反射した光は波長を吸収されていき、最終的には青の波長の光だけが人間の目に届く。
だから、空をみると青く感じられるのだ。
これは面白い事実だと思う。
モノに色がついてるのではない。
色は光とともに、感覚として認知されているということだ。
人間と動物では、色の見え方が違う。
そのため犬やカラスなどは、人間とはまったく違う色あいで世界を見ているということになる。
対象が見えるのは光があるからなので、闇の中ではモノが見えない。
いま見えている世界は、人間の目を通すからこのような色彩になっている。
モノの色彩は知覚する者が変わると、見え方が異なるということだ。
人間の心理にも影響を与える色彩
色彩は、人間の心理面にも影響を与えるという。
例えば、赤一色で塗られた部屋にいると情熱的な気分になったり、青一色の部屋にいればなんとなく寒さを感じるだろう。
緑は落ち着きを与えるし、黄色は子供っぽい無邪気さを感じさせる。
赤をじっと見ている人間は、興奮しやすくなるという話をきいたことがある。
自分が接している色彩から、知らないうちに影響を受けているということだろう。
これだけの力を持つ色彩であれば、絵で使うとき、相当な表現力を発揮するだろう。
つまり、色彩はそれ自体で何らかの表現力をもっているのだ。
これを理解していたファン・ゴッホは、チューブから絞り出したままの原色を使って絵を描いた。
また原色が一番引き立つ組み合わせの色彩で絵を描き、自己の思いを強烈に表現したのだ。
赤、青、黄、緑、オレンジ、紫…それぞれの色はそれ自体で表現性をもち、となりに置く色によって見え方が違ってくる。
汚く見える色も、となりに置く色との組み合わせによっては、美しく調和する。
色彩のハーモニーによって、絵を描く方法もあるのだ。
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色彩で自己を表現するには?
色彩で自己を表現したいなら、あなたの感覚が選ぶ色彩の組み合わせで絵を描こう。
僕は絵を描いて自己表現をする時、美しい色合いを探そうとは思わない。
それよりも僕の感覚が選ぶ、その時に最良な色を選択するだろう。
色彩のハーモニーは、美しくなくてもいいのだ。
大切なのは、色の組み合わせに自分の内的必然性があるかどうかだ。
色はそれ自体が表現力を持つ、素晴らしいツールだ。
だからこそ、あなたの感覚が選ぶ色の選択が必要。
どの色を選び、その隣にどんな色を置くか?
この行為がすでに、自己表現となっている。
色彩によって表現した絵を紹介
ここから筆者が色彩によって自分の思いを表現した絵を紹介しよう。
僕は絵を描くとき、ある色調でまとめることによって特定な感情をだすように制作することがある。
例えば以下の絵。
アクリル画で描いた「LOVE」。
上の絵では様々な赤のバリエーションで、「愛」という感情を表現したかった。
これは僕の中にある、幻想の森を描いたアクリル画(2009年制作)。
樹木の緑と、湖の青の色彩で、幻想の森という概念を描いたのだ。
絵の中にある赤い物体は、砂時計。
上から流れ落ちる砂で時間の流れを表わし、その様子が樹木や湖全体にいきわたっている状況を描きたかった。
だからこれは「幻想の森」であり、砂時計による時間の流れの色彩表現でもある。
これは、青の色彩で陰うつな自分を描いたアクリル画の自画像。
これを描いた時、どうにも僕は憂鬱な気分だった。
そんなうっ屈した気持ちを描きたいと思い、青の色彩表現をした。
青によって冷たさや抑うつ感、やりきれなさを出したかったのだ。
窓の外には太陽の光に照らされた自然があるので、鳥かごの中にいる鳥のような気持ちだったと思う。
上の絵を描くことによって、僕のゆううつな気持ちは昇華された。
芸術の恩恵は、こんなところにもある。
やりきれない思いを絵を描いて昇華すると、その感情を乗りこえることが出来るのだ。
ファン・ゴッホはサンレミの精神病院に入っていた時、迫りくる発作に恐怖しながらも絵を描くことによって気持ちを平生に保っていた。
絵を描くことは心の癒しになるのだ。
色彩はそれ自体で何かを表現するのまとめ
色彩はそれ自体で表現性を持っており、別の色との組み合わせによってなにものかを語れる。
どの色を使うかの基準は、あなたの感覚が何を選ぶかに従うようにしよう。
そうすることで、色彩による自己表現ができる。
万人が選ぶ美しさも良いが、あなたからしか生まれえない色彩を探すことは大切だと思う。
色彩は音楽の音に、似ている。
音楽には明るい調子のメジャーキーと、暗い調子のマイナーキーがある。
色彩にも、明るい色、悲しい色、情熱的な色、落ち着く色などがある。
人間のように色も、他との組み合わせでその魅力を発揮する。
あなただけの音楽を奏でるつもりで、色彩を選択しよう。
自分の感覚で描いた色彩の絵は、自分自身を表す曲なのだから。