漫画を描く工程に、ネームという作業があります。
ネームは漫画制作の中で、最もクリエイティブな部分。
なぜならネームは漫画の面白さを決める核となるから。
ここでは漫画アート芸術家の筆者が「漫画のネームとは何か?ネームを描く目的」について書いていきます。
Contents
どうして漫画のネームを描くの?【4コマ漫画アート】
前後のエッセイ漫画は以下リンクに♪
漫画のネームとは?
ネームとはこれから描く漫画をコマ割りし、構図や絵やセリフなどをラフに描いたもののこと。
ネームを基にして下描きやペン入れをするので、完成原稿の下地と言えます。
これまで温めてきたプロットを基にコマや構図、セリフ、キャラクターの絵や表情、モノローグなどをラフに描きます。
僕が漫画を制作する時の流れは以下。
ネームはプロットを漫画の形にして、完成原稿の下地になります。
この点で漫画制作において重要なポジションですね。
ネームを描く前の段階で漫画のテーマ、構想、プロットを決めました。
これら漫画の元となるアイデアを、漫画の形に移しかえる作業がネームです。
プロの漫画家も、ネームを描きます。
漫画家はネームを基に、編集者と作品の打ち合わせをするからです。
漫画家と編集者が話し合い、ネームを作成します。
作ったネームを元に調整しながら、最終的に原稿を描くという流れが一般的です。
漫画原作者がいる場合は以下のパターンがあります。
1:原作者が漫画ネームを描いて絵描き担当に渡す
2:脚本を参考に、絵描き担当がネームを描く
原作者がネームを描くこともあれば、漫画家がネームを描くこともあります。
ネームが完成した段階で、これから描く漫画の完成系が見えてきます。
漫画のネームは、映画などにおける絵コンテみたいなもの。
ネーム制作は物語の情景を映像として思い描く、想像力が必要な部分です。
ネームが下地となって完成原稿ができるので、漫画の面白さはネームの時点で決まるといえます。
業界用語ではネームを描くではなく「ネームを切る」と言います。
ネームは推敲して良くしていく
「漫画の下地がネームなら、下描きと一緒に描いた方が効率が良いのでは?」と思う人もいるでしょう。
下描きとネームは分けて考えた方が良いですね。
なぜならネームを描く時は何度も推敲して、イメージ通りの漫画に近づけていく必要があるからです。
いきなり一発描きでネームを完成出来る人もいるでしょう。
しかし多くは描いて消してを繰り返し、調整の末に完成ネームへ近づけていくものです。
なので下描きをする前に、ネームで漫画の全体像を形にしておく必要があります。
しかし中にはネームと下描きを一緒に行う人もいるようです。
描き直さなくていいので効率の良い制作法ですが、慣れるまでは難しいでしょう。
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ネームで描く絵はざっくりなラフ画でOK
ネームでは下描きのようにキチンとした絵を描く必要はありません。
ネームは完成された漫画の状態が把握できれば、ラフ画で大丈夫。
例えば漫画のネームを描くとき、キャラクターを棒人間にして、文字で名前を書いておけば誰かが分かります。
ネームに描く擬音は、だいたいの場所に文字を描いておけば下描きする時に位置を調整できます。
背景はどんな感じかを文字で書けば、下描きのときに資料を参考にして描けますね。
ネームは文字やラフ画を使い、原稿にざっくり何を描くかが分かれば大丈夫。
自分と漫画制作関係者さえ分かれば、ネームは記号でもかまわないということ。
ネームを元に完成作品を作るので「このネーム面白いか?」という客観的な目で見るようにしましょう。
漫画を一緒に制作する人がいるなら、最低限自分や関係者が分かるようなネームにしておきます。
あまりに絵やセリフが雑すぎると、どこに何を描いていいかが分からなくなってしまいます。
ネームの段階から「人に読んでもらう」ことを意識して描くことで、自分の漫画を客観的な目で見る訓練になります。
ラフ画とはいえ、それを読んだ人に漫画の内容が伝わるようにしましょう。
ネームを描く時は、セリフなどの文字を読めるように書いてください。
僕はネームのセリフ文字を雑に書きすぎてセリフ入れをする時に、何が書いてあるか分からなくなることがありました。
絵はラフ画でも、文字が判読できないとまた考えることになってしまいます。
そのため最低限ネームで書く文字は、判読可能なものにしておきましょう。
漫画のネームは見開き単位で描く
漫画を本の形に印刷する前提で描く場合は、見開き単位でネームを描くようにしましょう。
見開きとは本を開いた状態のことで、2ページ分が同時に見えていること。
読者が本の形で漫画を読むとき、見開き単位で目に入ります。
このため、見開きの状態でどう漫画が構成されているかが重要です。
漫画はコマの大小やコマの流れ、引きを作るコマなどを考えてネームを描きます。
見開きの状態で、漫画の流れが面白く見えていることが大切なのです。
また見開き単位で漫画ネームを描くことで、絵を描いてはいけないノド側がどちらかが分かります。
製本した時に本を閉じる側の部分をノドと言いいます。
漫画ではノドの位置に絵やセリフを入れると見づらくなるので、何も描かないようにします。
ネームの小口側なら、絵を描いて大丈夫。
ネームを一枚ずつ紙に描くと、どちら側がノドなのか分からなくなることがあります。
ぼくもA4用紙にネームを描いていた時、どちらがノドか印を入れ忘れて、絵を描いてしまったことがあります。
こうなると小口側にはみ出した絵を修正する問題がでるので、避けたいもの。
ネームは見開き単位で描くことで、ノドと小口がどちらかを把握できます。
いまはweb上で漫画を読めますね。
web漫画には上から順にコマを並べていく縦スクロールの描き方があります。
縦スクロール の場合は見開き単位でネームを描く必要はありません。
自分が描く漫画の形に合わせて、ネームの描き方も変えていきましょう。
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漫画ネームを描く紙とは?
漫画のネームはそこに何が描かれているかが分かれば、どんな紙でも大丈夫。
僕は漫画のネームを100円ショップで買ったA4のコピー用紙(100枚入り)に描いてます。
コピー用紙は安く枚数もたくさんあるので助かります。
漫画ネームは何度も修正することがあるので、紙の消費量が多くなりがち。
その点コピー用紙なら気兼ねなく使えるので、漫画ネームの紙に最適です。
読者の感情の動きを予想してカタルシスを感じさせる
ネームはそれを読んだ人の反応を予想して描くことで、読者の感情を誘導することができます。
ネームにはドラマが描かれるので、読者はキャラクターが体験することに一喜一憂します。
例えば主人公がピンチに陥れば読者はハラハラするし、憎き敵を倒せばスカっとします。
このようにネームの展開を意図的に導くことで、読者が感じることを誘導できます。
物語の中で読者をすっきりさせるネームを描くことで、それを読んだ人はカタルシスを得られるでしょう。
カタルシスとは物語に感情移入することで、普段たまっていた感情が解放されて快感につながること。
例えば日ごろ嫌味ばかりいってくる嫌な上司がいたとします。
上司に仕返ししたいけど、実際には何もできない。
でも漫画のなかで上司そっくりの敵キャラクターが登場し、こてんぱんに相手をやっつければ、気分が晴れるでしょう。
これがカタルシスの効果です。
ネームの流れで読者の感情を誘導し、最終的にカタルシスを感じるようなオチをつけると、読者は面白いと感じてくれるでしょう。
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漫画のネームとは何かのまとめ
漫画のネームとはコマや絵、セリフなど漫画の構成要素を、完成原稿をつくる前提で組み立てる作業です。
漫画のネームで描く絵は、ラフ画でも記号でもかまいません。
しかしネームで描くセリフなどの文字は、判読できるように書きましょう。
漫画ネームを描くコツとして読者の感情の流れを意識し、最終的にカタルシスを感じさせるように作ることがありました。
ネームを描いた段階で、ちゃんと漫画が面白いかを確認しておきましょう。
面白くないネームでいくら絵をがんばっても、漫画が面白くなることはないでしょう。
漫画の面白さを左右するという点で、漫画ネームは漫画制作の命と言えます。
漫画ネームが、その漫画作品の面白さを決定するのです。
ネームを描いたら何度も推敲して人に見てもらい、確かな面白さが確認出来た時点で、下描きに入るようにしたいもの。
ネームの修正点を発見したけど、すでに作画をしていたら直すのに手間がかかります。
だからネームの段階で、確実に面白い漫画になるまで磨いておく必要があるのです。